イノベーションの力 コロナ禍で加速するアイデアの融合

2020.10.26 00:00

(C)iStock.com/DarthArt

外部の技術やアイデアなどを組み合わせ、革新的なビジネスモデルを生み出すオープンイノベーションを加速させる動きが活発化している。観光系スタートアップと大手企業の提携も増加傾向だ。政府やメガバンクが支援環境を整えつつあり、観光分野での新展開に期待が集まっている。

 イノベーション創出に日本の未来がかかっている--。オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会はオープンイノベーション白書・第三版でこうした趣旨を説明している。世界的に製造業からサービス業への産業シフトは進行しており、日本でもGDPの7割以上をサービス業が占めるなど大きな変化が起きている。こうした変化の渦中にあって、日本では大企業の経済に対する影響力が大きくリソースも集中している状況が続いている。

 ところが、その大企業の影響力の下で発展してきた日本経済の労働生産性や企業の収益率は低い水準にとどまったままだ。しかも人口減少や超高齢社会の到来など深刻な社会問題が世界に先駆けて顕在化しており、大胆な革新による突破口を開く必要に迫られている。日本の未来は、まさしくイノベーションの創出、オープンイノベーションの成果にかかっている状況といえるわけだ。

 世界ではデジタル技術を活用し、グローバルに活躍するスタートアップが台頭し、大企業を中心とする効率的なイノベーション創出手法なども進化。21世紀型のイノベーション創出が進んでおり、日本にもこうした流れが波及している。

大手インフラに新興の技術活用

 時代的・社会環境的背景からイノベーションの重要性が増すなかで、観光分野におけるオープンイノベーションの取り組みも活発化しつつある。すでに大手旅行会社はそれぞれ関連部署を社内に設置。近畿日本ツーリストが14年に未来創造室を設け、エイチ・アイ・エス(HIS)も15年に未来創造室を開設して電力事業など新事業分野への参入の足掛かりとしている。JTBがグループ本社内に事業開発室を設置したのは16年。スタートアップとの連携強化に乗り出している。

 観光関連企業の取り組みも活発化している。JR東日本とその子会社でスタートアップへの出資や協業を推進するJR東日本スタートアップは、訪日外国人向け観光プラットフォームサービスを提供するワメイジングとの連携を強化。19年から訪日外国人に3日間乗り降り自由のフリーパス「JR TOKYO Wide Pass」を販売する実証実験を開始した。19年1~3月には実証実験の第1弾として、富士山、日光、ガーラ湯沢などの人気エリアをカバーするパスを販売。訪日外国人が事前にワメイジングなどのアプリで購入したチケットを成田空港に設置した有人カウンターで発券する仕組みを試した。この実験では、購入時のQRコードのチェック機能を機械化したシステムを用いた。

 また、19年12月から20年3月にかけて行った実証実験の第2弾では、事前にオンライン購入したチケットを上野駅に設置した専用端末で無人で発券するシステムをテスト。QRコードチェックの自動化に加えて、第1弾では有人で行っていたパスポートチェックを含めた発券プロセス全体を機械化することで購入にかかる時間の短縮を実現。第1弾・第2弾合わせて計約1700枚のチケットを販売・発券した。こうした成果をもとにワメイジングは、JR東日本が10月16日から来年2月28日まで期間限定で販売する在留外国人向けの鉄道パスを上野駅の専用端末で販売している。

遊休施設の有効活用に一手

 エンターテインメント事業者と組んだのはスペースマーケットだ。さまざまなスペースを簡単に貸し借りできるプラットフォームを運営する同社は昨年11月、ワタナベエンターテインメントと資本業務提携し、スペースシェアとエンターテインメントの掛け合わせによるイノベーションに取り組んでいる。まずワタナベエンターテインメントが所有する劇場「表参道GROUND」を自社のサイトに掲載し、劇場として使われない時間帯の活用などを進めている。また、法人向けのイベントプロデュースも行うスペースマーケットのイベントニーズに合わせて、ワタナベエンターテインメントがタレント派遣等のアレンジに協力する。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年10月26日号で】

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