数字でわかる地域の観光 都道府県の予算、宿泊者数、外客消費
2020.06.22 00:00
地方創生の鍵を握ると期待された観光。コロナ以降は状況が一変してしまったものの、ここ数年の旺盛なインバウンド需要を原動力に、確かに観光が地方に恩恵をもたらしつつあった。地域への訪問者や滞在中の消費も拡大し、自治体の観光への意欲も増した。その実態を観光関連予算や宿泊旅行統計、消費動向調査から見つめてみる。
トラベルジャーナルでは毎年、全国の自治体を対象に観光関連予算に関するアンケート調査を実施している。全国47都道府県と20の政令指定都市に協力を依頼、今年は47都道府県と神戸市を除く19政令指定都市、合計66の自治体から20年度の観光関連予算について回答を得た。
調査は予算の増減を前年度と比較できるよう本予算額での回答を求めている。組織改正などにより前年度との単純比較が困難な場合は予算額一覧表の備考欄に説明を付した。なお、20年度予算・事業計画については、新型コロナウイルスの感染拡大という特殊状況のもと、各自治体において見直しが必要となっている。
観光関連予算について回答のあった66自治体のうち前年度より予算を増額しているのは40自治体(28都府県・12政令指定都市)。前年度より予算を増額した自治体数は16年度44、17年度44、18年度40で、19年度は36だったが、20年度は再び40台に戻った。前年より増額した40自治体のうち、2桁増となったのは25自治体(17都府県・8政令指定都市)で、こちらも19年度の21自治体より増えている。観光関連予算額の動きからは、自治体の観光振興にかける意欲が19年度はいったん落ち込んだようにも見えたが、もともと東京オリンピック&パラリンピック開催予定年だった20年は、再び予算投下すべきタイミングと判断されていたようだ。
地域ブロック(運輸局管内)別にみると、9自治体中8府県市の近畿、13自治体中10都県市が増額だった関東や、7自治体中5県市が増額の東北、8自治体中5県市の中部が、増額した自治体の割合が多い地域だ。このうち近畿や関東、中部は19年度も増額だった自治体が多かったが、東北は19年度の増額は3県にとどまっていたことから、前年度の反動とみることもできる。反対に中国は7自治体中で増額は岡山市と広島県の2自治体のみ。四国も4自治体のうち徳島県のみが増額だ。ただし四国は19年度は3県が増額だったことから、その反動とみることもできる。
ちなみに観光関連予算額が2年連続で増加したのは20自治体(13都府県・7政令指定都市)、3年連続も11自治体(7都県・4政令指定都市)ある。5年連続となると、岩手県、福島県、岡山市の3自治体のみだ。
宿泊税導入の福岡県・市が大幅増
20年度の観光関連予算の前年度比の増額幅が大きかったベスト5は、1位が4.6倍の山梨県(363.5%増)で、2位福岡県(166.0%増)、3位福岡市(53.3%増)、4位奈良県(45.9%増)、5位大阪市(43.0%増)となっている。1位の山梨県は組織改正に伴う予算額の増加によるものだ。2位の福岡県と3位の福岡市は、いずれも宿泊税導入による予算増大効果がある。福岡県と福岡市は4月から宿泊税の徴収を開始しており、同税を財源とした新たな予算を編成。県は宿泊施設受入対応強化支援事業に3億4000万円を投入するほか、市町村の観光施策を支援する福岡県宿泊税交付金として2億1700万円を割く。また市はデジタルマーケティングによる観光振興の強化に6200万円を充てるなどとしている。4位の奈良県は4月に奈良県コンベンションセンターが開業しており、その管理運営事業として1億3800万円を投じる。5位の大阪市は豊臣期石垣公開事業および遺構調査予算を含み、3億6800万円が計上されている。
このほか、広島県は「観光地ひろしま推進事業」として9億6700万円を割く。同事業は戦後最大級の被害をもたらした18年7月豪雨災害からの復旧・復興を目指す取り組みの一環として行われる。
観光関連予算の増額幅ではなく予算額で比較すると、ベスト10は1位東京都229億円、2位横浜市50億円、3位沖縄県42億円、4位高知県33億円、5位福岡市33億円、6位岐阜県32億円、7位山梨県28億円、8位静岡県23億円、9位札幌市23億円、10位北海道22億円。
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