eスポーツと観光 地域が注目する成長市場
2019.12.16 00:00

(C)iStock.com/DigtialStorm
世界ではeスポーツが競技として認知されている。22年のアジア競技大会(中国・杭州)への採用が決まり、パリ五輪では追加種目への採用が検討されている。出遅れていた日本でも、今年の国体プログラムに取り入れられるなど変化の兆しが見える。
第74回国体「いきいき茨城ゆめ国体」開催中の10月5日と6日、つくば国際会議場では全国都道府県対抗eスポーツ選手権が実施された。国体といえば国民体育大会の名が示すとおり、日本を代表するスポーツの祭典の1つだ。文化プログラムとしての採用だったとはいえ、国体にeスポーツが組み込まれたことは日本における存在感の高まりを感じさせるものだった。
国体のプログラムにeスポーツを取り入れた理由について茨城県の大井川和彦知事は昨年5月の記者会見で、eスポーツが年齢・性別・ハンディキャップの有無にかかわらず対等に行えるということなどを挙げたうえで「全国で初めてこの取り組みをすることによって、いきいき茨城ゆめ国体・大会がさらに注目してもらえるチャンスになる。科学技術立県の茨城としてのイメージも同時にアピールできると考えている」と説明した。
経産省がeスポーツ振興へ
日本ではまだ、国体でeスポーツを取り上げることが注目を集める段階だが、世界ではすでにeスポーツが市民権を得ている。eスポーツとはエレクトロニック・スポーツの略称で、コンピューターゲームやビデオゲームを使ったスポーツ競技のことだ。
eスポーツ先進国の米国では1990年代からプロのゲーマーによるリーグが始まっており、2000年には韓国で国際的なeスポーツ大会「ワールドサイバーゲームズ(WCG)」が創設されている。今年7月にはWCGの決勝大会が中国・西安市で開催され、111カ国の約4万人が参加した予選を勝ち抜いた28カ国・約200の精鋭が熱戦を繰り広げた。世界の競技人口は1億人、大会を視聴する観戦者は4億人に迫るとの試算もあり、中国では正式な体育種目として国に認められている。世界のトップ選手が億単位の賞金を獲得することなど派手な活躍ぶりはメディアでもたびたび取り上げられている。
eスポーツの普及に関しては後れを取っている日本だが、ここへ来て状況が変わりつつある。18年1月には、それまでばらばらに活動してきた日本eスポーツ協会、eスポーツ促進機構、日本eスポーツ連盟の3つの社団法人が合併し、新たに日本eスポーツ連合(JeSU)が誕生した。団体の一本化を後押ししたのは経済産業省で、遅まきながら国としてもeスポーツの活性化に本腰を入れ始めた。
JeSUは経産省と共に、周辺市場・産業への経済効果を含めた国内のeスポーツ市場規模の試算や諸外国の発展事例の調査研究、eスポーツの現状・課題・展望についての検討等を行うとしている。経産省の委託を受け、具体的な事業にも取り組んでおり、経産省と共に「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」を創設し、第1回検討会を9月に、第2回を10月に開催している。
また国際的な連携にも乗り出しており、11月には日中韓eスポーツ国際競技の開催を目指すため、3国間でeスポーツ競技における覚書を締結。中国文化&エンターテインメント協会、韓国eスポーツ協会と共に、日中韓eスポーツ国際競技大会の20年の開催を目指す。
自治体も活発な動きを開始
このような動きに呼応して各自治体がeスポーツを活用した経済活性化や交流人口の拡大に関心を高めている。冒頭で紹介した茨城県が好例で、今年6月の県議会第2回定例会で産業戦略部の小泉元伸部長は「eスポーツは本県の恵まれた交通ネットワークを活用して既存の観光資源と組み合わせることにより、誘客面での相乗効果が期待されることから、市町村や各地の商工団体とも緊密に連携し、地域の特色を生かしたeスポーツツーリズムの創出にも努めていく」と観光面へのプラス効果に言及している。
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