ツーリズムの世界で存在感高めるグーグルの本気度
2019.11.11 00:00

筆者は最近、全日空が新規就航した西オーストラリアのパースを起点に2週間ほどの旅行を楽しんだ。ワイルドフラワー鑑賞が目的だったので、小さな村を泊まり歩いた。レンタカーでの移動のためプランニング段階からグーグルマップでルートを検討し所要時間、舗装道路か否かや、ガソリンスタンドの有無など、マップに含まれるさまざまな情報と機能をフル活用することになった。
大手オンライン予約サイトでもカバーしていない小さな集落もマップで宿泊施設情報が分かるので、直接ホテルを予約することもできた。さらに無人に近い広大な地域を走行するため道に迷うことは大きなリスクだが、現地のカーナビはお粗末でほとんど使い物にならなかった。結局マップの機能を使い乗り切ることになった。移動中ネット接続が不可能なエリアも多かったが、スマホにマップをダウンロードしていたため問題にならなかった。グーグルのアプリに大きくお世話になった。
こうした体験を踏まえると気になるのは既存の旅行産業への影響である。ひいきにしている英語サイトでグーグルを検索したところ、過去6カ月間で26件の主要ニュースが見つかり、非常に重要なプレーヤーとして注目を集めていることが分かる。簡単に内容を紹介したい。
4月の記事ではグーグルマップが次の巨大アプリになる可能性が取り上げられている。すでにグーグルマップで旅行の計画や手配が可能だが、そのデータはグーグルのカレンダーやメール機能とリンクされる。レストランなどのサプライヤーはマップに情報を載せることが不可欠になっている。周辺検索機能のカバーする業種が増えた結果、その取り扱いが前年比150%も増加したとされる。
マップ上に表示される建物は18年上期に1億軒以上増加した。毎月10億を超えるアクティブユーザーがいるとされるグーグルマップが今後ツーリズム分野に関わる度合いは大きく深まるはずだ。その後もホテル検索機能の強化などが報じられたが、興味深いのはグーグルレンズの翻訳機能とメニュー提示機能だ。例えばフランス語のメニューを読み込ませると料理の写真が映し出される。
5月には、それまでフライト、ホテル、トリップなどに分かれていた旅行関連サイトがグーグルトラベルという単一のサイトに集約された。その機能はグーグルマップにも使われている。
8月のニュースではモーガンスタンレーのリサーチを踏まえた報道がなされ、ユーザー数の割に経済的な貢献が限られていたグーグルマップが今後は大きな収入をもたらすとされた。今年中にマップ用の新広告システムが導入され、来年にはマップの収入が64%増加し50億ドル近くになるためである。レポートは23年にはマップの収入が110億ドルに達すると予測している。
サーチとマップで他の追随を許さない力を有するアルファベット(グーグルの持ち株会社)が本気でツーリズム分野に取り組んだ場合どのような影響が既存の旅行業界にもたらされるか予測は難しいが、少なくともその可能性を考慮しない将来計画はもはや成り立たない気がしてならない。GAFAに対する規制強化が検討されその動向にもよるが、大きな流れは変わらないようにも思われる。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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