大幅増の19年度観光庁予算、出国税の配分など検証

2019.02.25 08:00

200億円台で推移していた観光庁予算は一気に600億円を超えた (C)iStock.com/baona

初めて通年度で予算に組み込まれる国際観光旅客税(出国税)。これを受け観光庁の19年度予算は約666億円となり、前年度比2.4倍の大幅増となった。ただ、訪日プロモーションや環境整備に多くが割かれる一方、人材育成や海外旅行促進への配分は薄い内容となった。

 観光庁の19年度一般会計予算は前年度比2.42倍の665億9600万円となり、予算規模が大幅に増大した。東北復興枠予算を加えた予算額は、2.21倍の711億600万円だった。


 初めて通年度で組み込まれることになった国際観光旅客税の財源から485億円が充当されており、これを除くと180億9600万円となる。18年度一般会計予算から、新税充当額32億5000万円を除いた215億5000万円と比較すると、19年度は16%減ということになる。

 また、18年度は新税の充当分として観光庁が執行した予算額は32億5000万円であったのに対し、新年度は233億4600万円まで拡大した。国際観光旅客税の充当分は、観光庁執行の予算額である414億4200万円の56.3%を占めることになる。予算の半分以上が国際観光旅客税を財源とする予算となっているわけだ。

251億円は5省庁に移し替え

 新年度の新税の税収見込みは500億円となり、観光庁の田端浩長官は記者会見で、新税導入における予算編成について「27年ぶりの税の導入であり、次のステージに向けた高次元、高度な施策に充てていく。初年度なので効果的に使い、しっかりと成果を上げていく」と決意を語った。


 新たな税収の500億円から観光庁予算の財源として組み込まれた485億円のうち、233億4600万円分を観光庁が執行するが、残りの251億5400万円分は、いったん観光庁の予算として一括計上した後に他省庁に移し替えて執行する。

 これは17年12月に観光立国推進閣僚会議が決定した「国際観光旅客税の使途に関する基本方針等について」で示された「国際観光旅客税の使途に関する予算編成の考え方」に基づく。これには19年度の予算編成に当たって、「観光財源を充当する具体的な施策・事業については、硬直的な予算配分とならず」「毎年度洗い替えが行えるよう、観光戦略実行推進会議において、民間有識者の意見も踏まえつつ検討を行い、予算編成する」という方針が示されている。

 観光庁はこの方針を踏まえ、「さまざまな意見を取り上げ、硬直的にならないよう時宜にかなった内容にすべく、予算当局、関係省庁とも話し合いながら、その過程においては観光庁としての提案も行いつつ、予算編成を行った」(総務課)と説明している。

 なお、宮内庁が予算執行する15億円分は観光庁への一括計上からは除かれている。新税の財源を使った予算を執行するのは、観光庁以外では、法務省、財務省、文化庁、環境省、宮内庁の5省庁となる。

CIQ、地域・文化の環境整備に

 観光庁以外の各省庁の施策を大きく分けると、空港や港湾で迅速な手続きをするためのCIQ整備と、インバウンドを目的とした地域や文化資源の充実を図るための環境整備となる。CIQでは、法務省に70億6300万円を移し替えて、「快適な出入国の環境整備」事業を行う。これまでの日本人用顔認証ゲートやバイオカートの増配備に加え、外国人の出国手続きにも活用範囲を拡大するほか、ディープラーニング技術を活用した個人識別情報システムの導入による上陸審査の円滑化・厳格化を図る。空港やクルーズ船ターミナル拡張に伴い審査端末機器も増配備する。


 財務省にもCIQ整備が充てられた。「円滑な通関等の環境整備」30億1100万円を執行し、空港では、事前にアプリで携帯品を電子申告した場合に、迅速な通関が可能になる専用ゲートを整備し、高性能機器の導入により迅速な検査を実現させる。港湾では旅客ターミナルのない港に移動式検査施設を派遣し、手続きの混雑解消を目指す。

             【続きは週刊トラベルジャーナル19年2月25日号で】