フォーカスライト調査に見る米旅行エージェントの復活
2019.02.11 08:00
業界の流通はインターネットが伝統的な旅行会社に取って代わるという説が定着した印象だが、最近米国のウェブサイトでは旅行エージェント復活の動きを伝える記事を散見する。18年11月に調査会社フォーカスライトが「米国旅行業流通の展望2016-2021」を発表した。
トラベルウィークリー(TW)によれば、執筆者の1人でもある同社のアナリストは、06年のこのレポートで旅行会社は消滅すると断定したが、これは間違いだったと告白している。今回の調査でエージェントは生き残っているだけでなく、サプライヤー、コンソーシアム、ホストエージェントなどから求められる存在で、特に高級レジャー旅行の販売に実績があることがわかった。
調査対象は1551社で、サプライヤーの航空、レンタカー、ホテル、クルーズ、パッケージツアーから集約した旅行エージェントの販売額総計は、17年1128億ドル、21年予測は13%増の1270億ドルである。この要因を、大手トラベルリーダーズグループCEOは、旅行の複雑化、エージェントへの信頼、体験旅行の需要増と分析する。インターネットとソーシャルメディアの情報の氾濫に疲れた消費者はエージェントに助けを求める。有効な人的アドバイスを得た旅行者はその後固定顧客になる。アップグレードや特別料金のメリットもある。実際にスイートルーム、航空の上位クラス席を販売している主力はOTA ではなくて、エージェントであると述べている。
エージェント復権の中で、強調されているのは、社員でないインディペンデント・コントラクター(IC)の貢献である。調査対象エージェントの平均要員構成は従業員14人、IC40人である。調査に答えたエージェントの51%が在宅エージェント、44%が店舗を持つエージェント、その他は大手ネットワーク所属のエージェントである。
もう1つ明らかになったのは、店舗新設に投資する会社が増えており、全体の10%がすでに新店舗を開設し、10%が来年開く予定である。新店舗は必ずしも従来型でなく、コーヒーショップ兼業や旅行資料の図書館併存など新しい形態が出現している。ヴァーチュオーソに所属するテキサス州オースティンのディパーチャーラウンジはしゃれた内装の店舗で、ワイン、コーヒーを提供するカフェとの複合店舗での成功例として知られる。
OTAなどと平和的に共存
流通経路別のシェア推移予測は、17年と21年比較で、旅行エージェントが30%から29%、サプライヤー直営ウェブが28%から30%、OTA が18%から26%、その他オフラインが24%から20%である。大勢としてネット経由の伸長が気にかかるが、旅行エージェントシェアが一定水準を維持し、その他のチャネルと「平和的に共存している事実」を調査は重視している。エージェントの経営実態にはIT化以前に比べていくつかの変化がみられるが、新しい流通システムの中でそれなりの存在感を示しているということだろうか。
なお、12月の米国旅行業協会(ASTA)が発表した消費者対象の「米国旅行動向調査2018」でも、米国の旅行需要が継続して伸長する状況下で、旅行エージェントへの消費者の評価が高いことを報告している。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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