GWの海外旅行商戦総括 予測どおり回復基調に乗ったか

2024.06.03 00:00

(C)iStock.com/MariuszBlach

海外旅行者数は今年に入ってゆっくりと増加傾向にあるものの、コロナ禍前と比較すると順調な回復とまではいえないのが実態だ。この先、海外旅行はどう動いていくのか。繁忙期の需要動向はそれを占うバロメーターの1つになる。今年のゴールデンウイーク(GW)の海外旅行はどうだったのか。

 昨年のGW直前の4月末にコロナ関連の水際対策が完全撤廃され、以降の海外旅行需要の回復に期待が高まった。もちろん、水際対策が残り出入国のハードルが高かった22年と比べれば、昨年の海外旅行需要は大幅に伸びた。しかしコロナ禍前の19年と比較すると、水際対策撤廃後の海外旅行需要の回復は順調とはいえないレベルだった。

 昨年5月以降の日本人出国者数を19年と比較すると、5月53.0%減、6月53.8%減、7月46.3%減、8月43.1%減、9月42.6%減、10月43.6%減、11月37.5%減、12月44.6%減と、減少幅は少しずつ改善しているようにも見えるが、5~12月の8カ月間の合計では結局、45.3%減と目立った回復には至らなかった。

 それでも今年に入り1月42.3%減、2月36.2%減、3月36.8%減と、ようやく19年比で6割を上回る出国者数が続くようになってきた。そうして迎えたのが、水際対策撤廃後2度目となる今年のGWだった。海外旅行業界の注目がその需要動向に集まった。

 今年のGWは4月27日からスタートし、昭和の日の29日までが前半の3連休。その後に平日が3日あり、憲法記念日の5月3日から6日までが後半の4連休となった。平日3日間を休めれば最大10連休となる。ただしカレンダー通りであればGWが前半と後半に2分割される形だ。

 4月4日にJTBが発表したGW(4月25日~5月5日)の旅行動向調査では期間中に前年のGWの67.6%増に当たる52万人の日本人が海外旅行に出かけると推計している。推計の基になったのは各種経済動向や消費者行動調査、運輸・観光関連データ、JTBグループが実施したアンケート調査などで、海外旅行者数の推計は「前年の水際対策終了がGW間際の発表だったため海外旅行を断念した人が一定数いたと想定し、その反動が見込まれる」ことなども加味して計算したものだ。

 今年のGWの推計値を過去の実績データと比較すると、19年のGWの92万9000人との比較では回復率が56.0%となる。しかし、土日曜・祝日のみで10連休だった19年は例外的で、14~18年の5年間の海外旅行者数は約55万人前後で推移している。19年を除く平均値との比較に基づけば今年のGWは「コロナ禍前の8~9割ほど回復している」とJTBは見ている。

 旅行会社としてのJTBのGW海外旅行の予約者数は前年比225%と倍増している。また、予約が多い好調方面はアジアやハワイで「短い日数で旅行できる方面が人気」とのことだった。

旅行各社はコロナ前5割程度

 エイチ・アイ・エス(HIS)はGW期間(4月26日~5月6日)の海外旅行について4月4日時点の予約者数が前年同期比で23.2%増と発表した。全地域で予約者数が前年より増えているが、地域別では中近東・アフリカ地域が32.0%増で最も伸びが大きく、以下、オセアニア30.6%増、アジア27.8%増、欧州19.8%増と続く。ボリュームの大きいアジアを詳しく見ると、南アジアが14.1%増にとどまるのに対し東アジアが35.3%増で、韓国、台湾が好調。旅行先別の伸び率でもチェジュ(1402.1%増)、香港(352.8%増)、上海(314.3%増)という東アジアの観光地がトップ3を占める。

 HISにとっては昨年のGW、夏休み、年末年始、そして今年のGWと、水際対策撤廃後の主だった繁忙期の海外旅行予約者数がいずれも増加となった。海外旅行需要が回復に向かっている手応えは感じているはずだ。それでも回復のペースには満足していないとみられる。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年6月3日号で】

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