政治と観光
2024.04.22 08:00
わが国には旅行業法、国際観光ホテル整備法、観光圏整備法、住宅宿泊事業法(民泊新法)など観光振興や事業を営むにあたって必要な多くの法令があるが、その礎となりわれわれの活動のよりどころとなる法律は観光立国推進基本法(07年1月施行)である。
これに基づいて4次にわたって策定された観光立国推進基本計画や「明日の日本を支える観光ビジョン」にも観光を21世紀の日本の重要な政策の柱として位置づけ、目指すべき目標のほか、国・地方公共団体・観光事業者等の果たすべき役割、地域住民が誇りと愛着を持って地域を持続発展させ国内外からの観光を促進することを目指すことなどが明記されている。
観光立国推進基本法は議員立法として全会一致で成立した法律で、施行の翌08年に誕生した観光庁を司令塔に政官の強力なリーダーシップのもと、日本の観光産業が大きく発展してきたといっても過言ではない。
東日本大震災から1カ月後の11年4月21日に開催された「東北復興支援の集い」は自粛ムードが広がるなか、観光振興に力を入れる国会議員が発意したもので観光による東北の復興に大きな弾みとなった。観光産業関係者600人を集めた熱気あふれる集いだったことをいまでも覚えている。当時、政権交代下であったが、観光に対しては与野党ともに力強くサポートしてくれ、それがいまにつながっていると感じる。
コロナ以前はこのように強い政治と、観光を成長戦略に位置づける首相官邸と観光庁による霞が関の官庁横断の推進体制にけん引され、日本政府観光局(JNTO)が大きく力をつけたこともあり、訪日外国人旅行者3000万人を達成するなど存在感を見せていた観光産業だった。しかし、3年半にわたるコロナ禍で需要が蒸発し、水際対策終了後は人手不足など以前から懸念されていた問題点が一気に露呈、現在その対応に追われている。
この急速な需要回復期に供給側がすぐに追いつけなかった大きな要因の1つに、観光産業そのものがコロナ禍で観光を何としても救済、下支えしようとした政治や行政を応援できなかったことがあるのではないか。産業界が一丸となって適切な広報宣伝、国民への観光産業の重要性を訴え、正しい世論形成や啓蒙ができず、観光産業への心ない発言を繰り返した一部政治家やマスコミ、それにあおられた世論にあらがえなかったことが結果的に観光のイメージを大きくダウンさせてしまった。
諸外国に比べ水際対策終了の時期が遅く、さらに多くの離職者を出してしまい、ポストコロナになっても観光産業に復帰してこない、新規の採用もままならない現状に即効性のある答えを導くのは容易ではない。それでも、名実とも官民力を合わせて観光により日本を盛り立て、地域の隅々まで経済波及効果をもたらせるように努力しなければならないだろう。
すそ野が広い観光産業では交通、宿泊、飲食、テーマパーク等、企業や業界ごとに考え方や課題解決へのアプローチが異なることがあるが、相互に理解し、観光産業が一体となって強く観光の重要性を訴え共感を得られるようにしていく必要がある。例えば能登半島地震で大きな影響を受けた北陸4県に対して当協会が実施する「行こうよ!北陸」キャンペーンのような事例を増やし観光への支持・共感を確実にしていく。
国への要望だけでなく観光産業自ら理想とする中長期のビジョン・施策を描き、具体的に提言し、国の政策へしっかりと反映できるよう関係団体・企業とともに研さんを重ねていきたい。
最明仁●日本観光振興協会理事長。JR東日本で主に鉄道営業、旅行業、観光事業に従事。JNTOシドニー事務所、JR東日本訪日旅行手配センター所長。新潟支社営業部長、本社観光戦略室長、ニューヨーク事務所長、国際事業本部長等を経て23年6月より現職。
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