<PR>復興への足取りたどる福島浜通りの旅 飲食や土産施設整いツアーも組みやすく
2024.03.11 00:00
東日本大震災から13年。福島は復興への歩みを進め、観光施設も新設・再開するなど、さまざまなツアーが組めるようになっている。実際に福島県沿岸部である浜通りの震災伝承施設と周辺の復興施設に訪れた。
福島県には震災の被害を伝える施設に多くの人が訪れるようになり、周辺の復興施設や観光関連事業も増えてきた。復興状況とともに魅力を発信することで交流人口増加につなげたいという県の意向を受け、東武トップツアーズ福島支店が企画した「震災を経験したふくしまの“いま”を知り五感を使って“魅力”を感じる旅」に参加した。
行程はいわき市からスタートし、県有数の海水浴場がある薄磯・豊間地区を訪れた。いわき市で被害が一番大きく、8m以上の津波が海岸沿いの住宅を飲み込んだ。いまは道路がかさ上げされ、防潮堤と防災緑地が造られ、新しい家々が高台に立つ。薄磯に20年に開館したいわき震災伝承みらい館には中学校卒業式当日の黒板や被災から復活したピアノなど津波の被害を伝える展示が並ぶ。
同館にはいわき語り部の会が事務局を置き、15人の語り部がそれぞれの体験を伝える。会長の大谷慶一氏は着の身着のまま裏山に逃げ一命を取り留めた。助けられなかった近所の女性、声をかけた子供たち。時間を経て記憶の断片が少しずつつながり、話せるようになったこともあると語る。
薄磯の海岸からいわき市内を17kmほど北上した所にあるのが四倉町のワンダーファーム。コンピューター管理による先進的なトマト栽培を通年で行うだけでなく、レストランや加工工場、直売所も展開し、6次産業化に取り組む。食事ができるほか、ファーム視察、収穫体験を行程に組める。
伝承館周辺でも飲食可能に
ここから双葉町へ北上。途中、東京電力福島第1原子力発電所が立地する大熊町や双葉町に入ると街の様子が変わる。いまも帰還困難区域があり、人々が他所へ避難したまま店舗や住宅が残される。その中で除染やインフラ整備を進める特定復興再生拠点区域が設定され、復興拠点として整備が進むのが沿岸部の中野地区。20年9月には東日本大震災・原子力災害伝承館が開館し、23年11月時点で25万人が訪れた。原子力発電所が造られた背景から事故原因や対応、県民の思いから復興に向けた国家プロジェクトまで豊富な資料と視覚効果で伝え、語り部による講話も開催される。
隣接するのが双葉町産業交流センターで、オフィスや周辺を見渡せる展望エリア、語り部の講演にも使用される会議室が備わる。伝承館周辺は当初飲食施設がなく、団体が訪問する際にケータリングを手配していたそうだが、現在は交流センター内にレストランや地元で人気の軽食店など飲食や土産店、コンビニも入居し、訪れやすくなった。
車で10分ほどの距離に道の駅なみえがある。直産品や名物などが並ぶほか、フードコートがあり、会議室やキッズスペースも併設。21年にはなみえの技・なりわい館も開業し、震災で移転した日本酒の蔵元と大堀相馬焼の窯元が戻った。共に江戸時代から伝わる地場産業で町の伝統の復興拠点になる。
宿泊はいこいの村なみえで。既存の施設を帰町時の宿泊施設として整備した施設で、離れのコテージは町民が避難した二本松市の仮設住宅を再利用した。現在はお盆などに帰町する町民が滞在するほか、事業者の利用も多いという。
翌朝はJR常磐線双葉駅に向かう。常磐線は20年3月に全線運転再開し、駅周辺は同年8月に避難指示が解除され、住民が帰れるようにインフラ整備が進められている。更地になった土地とかつてのまま残された建物が混在するなか、ひときわ目立つのが点在する壁画の数々。アートで町を元気にしようと、ミユーラルアートカンパニーOVER ALLsが始めたFUTABA Art Districtプロジェクトで、描かれた1つ1つの絵は力強いメッセージを放つ。
相馬野馬追で知られる浜通り北部の相馬地域への道中、南相馬市には国が進める福島イノベーション・コースト構想の中核施設・福島ロボットテストフィールドがある。事前手続きが必要だが、1回25人までの見学を受け入れている。
観光協会が復興コース案内
最後に訪れた相馬市では観光協会が復興視察ツアーを実施、食事や宿泊の手配も行う。今回、松川浦に面し、40~50人の食事が可能なホテルみなとやで昼食をとったが、この宿も1階が津波による浸水被害に遭った。相馬市沿岸部は道路や防災堤防が整備されたものの、22年3月に起きた福島県沖地震による被害の修復がいまも続けられている。伝承鎮魂祈念館は津波で被災した原釜地区に建つが、展示される震災前の風景や当日の映像から津波の大きさにあらためて驚く。
荷さばきから集配施設、漁具倉庫まで漁業関係の施設・設備についても旧相馬中村藩の統一デザインで復旧し、浜の駅松川浦の市場もツアー客でにぎわっている。港から市道大洲松川線を進むと、磯部地区に一面に広がる太陽光パネルが見える。土壌改良で農地が復活した話を聞きながら向かった市の防災備蓄倉庫では飾られた消防団員の遺影が涙を誘う。食料や防災品を備蓄する倉庫内には支援を受けた自治体名が掲示され、互いの絆が示されている。同市は自主避難区域で避難は自費だったり、避難先の生活や必需品など経験上の貴重な話が聞ける。
被害状況やその後の対応、そしていまの姿。復興について考えるには地元の肉声を直接聞くのが一番だ。それを可能にするのがツアーの存在。旅行業では周辺の飲食や宿泊、土産も含めツアーとして成立させることが何よりの復興となる。相馬市観光協会の遠藤美貴子氏は「災害の伝承施設だけでは暗いイメージになるので、食や景色を織り込んで楽しく頑張っているところを見てほしい」と話す。まずは訪れることが地域のためになる。
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