数字で測る地域の観光 都道府県の予算、宿泊者数、観光消費

2023.06.19 00:00

(C)iStock.com/patpitchaya

3年にわたり猛威を振るったコロナ禍が沈静化し、昨年10月の水際対策の大幅緩和、今年4月の水際対策終了、5月のコロナ分類の5類への移行と事態は進展。かつての日常が戻りつつある。これに伴い観光を取り巻く環境も大きく改善。地方自治体も観光需要の回復に向けインバウンド分野を中心に予算強化に乗り出している。

 トラベルジャーナルでは各地域の観光関連予算の推移を明らかにするため、地方自治体を対象に毎年アンケート調査を実施している。今年も全国47都道府県と20の政令指定都市に調査協力を依頼し、都道府県・政令指定都市のすべてとなる合計67自治体から23年度予算に関する回答を得た。調査では、予算の増減を前年度と比較できるように基本的に本予算(当初予算)での回答を求めているが、組織改正等の理由により前年度との単純比較がふさわしくない場合は、予算額一覧表の備考欄に説明を付記している。

 またコロナ禍が影響を及ぼし始めた21年度予算以降は補正予算により需要喚起キャンペーンを実施するケースが増えたが、一方で巨額の需要回復キャンペーンを本予算に組み込む自治体もあり事情はそれぞれ異なる。結果的に本予算のみでの前年度比較が必ずしも実態を表さないことがある点について注意が必要だ。さらに感染状況によりキャンペーン中断といったイレギュラーな状態も発生し、結果的に補正予算が繰り越され、次年度の需要喚起キャンペーンに充てられるケースも少なくない。このように予算増減の要因が複雑化し、予算を前年度や他自治体と単純に比較することが難しい面がある。予算の増減に特別な背景がある場合は極力説明を加えていくことにする。

 67自治体からの観光関連予算についての回答のうち、前年度より予算を増額したのは31自治体(21都府県・10政令指定都市)で、22年度の46から大幅に減少した。言うまでもなく前年度との比較には前年度の増減が必ず反映される。実際に18年度以降は予算を増額した自治体数が前年度を上回った年と下回った年が交互に並んでいる。その意味では今年度の減少は予想されたものでもあるが、前年度より予算を増額した自治体数が最近10年間でも最も少なかった21年度の33をも下回った点は見逃せない。コロナ禍が沈静化しこれから観光需要回復を目指そうというタイミングでの予算編成にしては渋い結果といえなくもない。

 しかしこれには23年度予算が抱える特別な事情も関係している。23年度に観光関連予算を減らした自治体の中では山口県(89.2%減)、長崎県(88.1%減)、香川県(81.8%減)、北海道(80.0%減)、富山県(79.1%減)、高知県(71.2%減)、札幌市(69.3%減)、千葉市(60.6%減)、栃木県(60.1%減)、熊本市(59.7%減)と減少幅が著しく大きいケースが目立つが、個々の内容を見るとGoToトラベルがらみの特別事情などがある。

 例えば山口県は22年度予算からGoToトラベル予算を除いて比較した場合の23年度予算は、前年度より78.7%増となる。長崎県も「事業費の大幅減は全国旅行支援等、コロナ対策事業が終了したことによるもの」と説明。高知県も「全国旅行支援や県独自の交通費助成事業など需要喚起策にかかる経費を除けば23年度予算は1億6000万円の増額」としている。栃木県も同様に前年度予算ではGoToトラベル事業の関連予算を含む予算を組んでいたため、単純比較では今年度予算が大幅減となった。熊本市もコロナ禍で影響を受けた旅行会社や宿泊施設を支援する旅行商品割引事業の予算が大幅に減少したことで「観光関連予算が大きく減少した」としている。

 コロナ下には異次元の巨額な支援予算が組まれてきたが、需要環境の改善により支援予算を削減できたために、見かけ上は観光関連予算が前年度より大幅に減少するという、アフターコロナへの移行期特有の事情が背景にある。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年6月19日号で】

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