地方創生の問題
2023.03.13 08:00
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福井県池田町の広報誌に掲載された「池田暮らしの七か条」が物議を醸している。「都会風を吹かさないように心掛けて」「品定めがされていることを自覚して」「都会暮らしを地域に押し付けないように」という表現から炎上した理由がおのずとわかるはずだ。
池田町のスペックは次のとおり。町長は無投票で現在7期目。人口は2327人で高齢者率45.1%。この人口に町の職員は63人もいる。本来「町」の人口基準は1万人だが、村にすると給料も定数も下げられるので町のままで居続ける。財政力指数は福井県17市町村最下位の0.14。補助金で生き延びる自治体の典型だ。このままでは消滅可能性が高く移住者の誘致が不可欠だが、自分たちの流儀は曲げずその目的を達成したいと考えるのは無理筋だろう。
地方創生の言易行難な実態が垣間見える。地方創生は14年の第2次安倍内閣で提唱され始めた。背景に日本全体の人口減少と自治体によっては将来消滅が危惧される状況がある。国は各自治体に人口を増やす努力を求めるが、そのためには仕事が必要という前提がある。そこで国では「まち・ひと・しごと創生」という名称に変わっている。
だが地方創生の問題は国にアイデアがないので自治体にアイデアづくりを丸投げして、単なる補助金事業になっている点にある。従って地方への人口分散効果は全くない。総務省から22年の住民基本台帳年報が発表されたが、コロナ禍を経て東京への一極集中が完全復活した。36道府県で転出数が転入数を上回るが、特徴的なことは30エリアで男性より女性が多く転出超過となり、平均で男性の1.3倍の女性が地方から消えた。
よい仕事がなく規範性が高いだけで娯楽に乏しいカルチャーを嫌う若年層、なかでも女性が多いのだろう。結果、東京都は男女とも1万人を超す全国トップの増加数なばかりでなく、女性の転入超過数が男性の1.6倍となる。これでは日本の人口増を地方の努力で改善するもくろみは完全に外れている。
だが、東京への一極集中というが日本は他国と比べ飛び抜けているのだろうか。日本の場合、東京に約11%の人口が集中する。確かにプライメイトシティは発展途上国に多く存在するが、ロンドンやパリも人口集中度は高いため、プライメイトシティの存在がマイナスと一概に言い切れない。
日本の場合、むしろ気になる点は各道府県内における首位都市への人口集中だ。全国の23道府県で首位都市に3割以上の人口が集中している。地方創生に取り組むなら、東京都あるいは首都圏との対立構図という枠組みで発想するだけでなく道府県内における地域創生について考えることがいの一番ではないだろうか。地域おこしと観光業は密接な関係で語られるが、地元カルチャーのクセの強さや人口動態の現状などを見ると、補助金頼みで描いた青写真を実行したところで観光がすぐに福音となるような簡単な話ではなさそうだ。
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清水泰志●ワイズエッジ代表取締役。慶應義塾大学卒業後、アーサーアンダーセン&カンパニー(現アクセンチュア)入社。事業会社経営者を経て、企業再生および企業のブランド価値を高めるコンサルティング会社として、ワイズエッジとアスピレスを設立。
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