Z世代が直面するリモートワーク
2022.08.08 00:00
米国ではコロナ禍の中に卒業してオフィスが閉鎖され始めた頃に就職、1度も出社したことがないZ世代が増えている。多くがリモートワークを気に入り、この働き方を続けることを望む一方、疎外感や不安を抱えているという。
米労働統計局の予測では、30年までに労働者の3分の1近くがZ世代になる。幼い頃からデジタル技術に親しむこの世代は、20年秋の調査で勤務時間の半分以上をリモートで働きたい人が69%に上った。Z世代に限らず18~29歳の多くは恋人がいなかったり、実家を出て親とあまり会えなかったり、引越しで友人関係を結ぶのが難しかったりと人生の中で孤独な時期を過ごす。こうした時期にオフィスで働くことは、上司や同僚から学び、仕事上の人間関係はもちろん友人や恋愛に発展する可能性のある相手との出会いの機会でもあった。肌感覚で他の人々のエネルギーを感じる職場経験がないことは私生活や職業生活への影響も懸念される。
調査ではリモートワークが原因で不安やうつが激しくなった人が半数近くいる。在宅勤務は孤独や不安を感じやすく、成長過程で対人交流の少ない世代には影響がより顕著になると専門家はみる。
リモートワークの仕事面の課題も多い。仕事上のネットワークをうまく築けるかはプロとしての足場が固まっていない若手には大きな問題だ。若い社員は職場での経験が少なく権限も限られるため、自分が正しい方向に進んでいるか不安にかられやすく蚊帳の外に置かれている感覚に陥る可能性も高い。一貫したフィードバックがない場合、「上司は怒っているのか、自分はちゃんとやれているのかと考え始める」「取り残されることへの恐怖を感じる」などはその一例だ。忘れられる不安もある。ある調査では管理職の42%が仕事を割り振る際にリモートワーク社員を忘れることがあると答えている。
また、リモートワークでは誤解や嫌な思いを受けやすいかもしれない。強固な人間関係を築いたり、既存の関係を高めたりできないことが原因で、コミュニケーション不足で不信感が生まれやすくもなる。さまざまな通信手段でもそうした問題を乗り越えるのは容易ではない。
孤独を感じつつも、柔軟に働く場所を選べるおかげで、離れて暮らす家族をより頻繁に訪ねられる長所を評価するリモートワーカーもいる。ビデオ会議システムで上司やチームメンバーと生産的なバーチャル会合を行う人もいる。きちんとした身なりで出社して1日中デスクに座り、帰宅する必要がないのもリモートワークの長所だ。
企業がリモートワーク社員を定着させるためには何らかの没入感を望む若い社員を仕事に引き込むことだろう。つながりや帰属意識がなければ会社に愛着を抱くことはなく、気に入らないと思えばすぐ転職を考える。
対面での会議を開いたり出社日を設けたりすれば一部社員の欲求を満たすのに役立つ。が、大半の時間をリモートで過ごす社員には入念なサポートが必要になる。新人研修としてリモートワーク社員に最初の1カ月間、定期的なミーティングや学習イベント、共同作業による業務遂行を経験させる例もある。こうした環境下でリーダーになる方法を身に付けるプログラムも必要ありそうだ。
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