リゾートフィーでマリオットが決断

2022.02.14 00:00

 昨年11月、ペンシルベニア州司法長官はマリオット・インターナショナルと、リゾートフィーを室料に含め予約の当初段階から明示することに合意したと発表した。リゾートフィーはここ20年ほど旅行者、消費者団体、行政から批判を浴び、極めて悪評高い慣行と見られてきた。地域により、デスティネーションフィー、アメニティーフィー等の呼称で、WiーFi、フィットネス、プールのタオル、駐車料金、室内でのコーヒーやミネラルウオーターなどの経費とされ、ホテルにより内容や金額が異なり、顧客に選択の自由はなく1泊1室あたり40ドル程度を請求される。

 特に問題とされるのは、予約の開始段階で明示されず、予約手続きが進む過程で、ひどい場合はチェックイン時に初めて開示されることだ。フォーブスのサイトが10月に伝えた例では、ラスベガスのシーザーズパレスで、最初に提示された1泊98.1ドルが総額提示段階で税金19.15ドル、リゾートフィー45ドルが追加され、計162.25ドルとなった。

 さらにコロナまん延時にオーランドのホテルで、閉園中のディズニーワールドへの送迎代が加算されたり、多くのホテルでコーヒーメーカーが撤去されているのに使用料が請求されるなど、コロナ規制で提供されないサービスも請求された例が多く報告されている。

 業界団体の米国ホテル・宿泊協会は、18年統計で93%のホテルはリゾートフィーを設定していないとするが、政府の疾病対策に応じてホテルがどれだけリゾートフィーを値下げしたか公表していない。ホテル経営者はこの18カ月の経営不振で、評判の悪さを承知のうえ、なりふり構わずリゾートフィー徴収を続けていると見られている。マリオットは19年にリゾートフィーで1700万ドル受領したと公表している。

 19年頃から多くの州がこの問題の調査を始め、議会でも動きがあり、ワシントンDCとネブラスカ州はマリオットとヒルトンを提訴した。

 今回、ペンシルベニア州司法長官はリゾートフィーは消費者保護法違反と指摘したが、交渉の結果、提訴ではなく、マリオットが予約サイトの1ページ目から室料に付随するすべての経費を明示する改善策で合意した。マリオットはこの方針を9カ月以内に全米のホテルに徹底させると確約した。今後はマリオットの決断に他のホテルが追随し、過去10年来問題視されてきた慣習が解決されるかが問われる。

 12年以来批判を続ける旅行者保護団体トラベラーズ・ユナイテッドは昨年ワシントンDC上位裁判所にMGMリゾーツに対してリゾートフィー廃止と、コロナ期間中存在しないサービスへの徴収停止を提訴したが、今後マリオットの行動を監視し、その他ホテルもこの道義に反する行為を止めるよう期待すると述べている。

 旅行業界も、ホテル産業は同業他社の動きに常に敏感で取消料規定変更などで同調することが多く、今回のマリオットの決断にならい取引の透明化が他ホテルでも進むことを期待する。また、コーネル大学教授は、ホテルが法的訴訟を受け消費者の怒りを買う行為は営業上得策でないと判断するようになったと指摘している。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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