観光業界キーパーソンの21年回顧と展望③
2021.12.20 00:00
トラベルジャーナルが観光業界のキーパーソンに実施した「21年のニュースランキング」に関するアンケートから、自由記述欄の回答を紹介する。ニュースランキングの結果は週刊トラベルジャーナル21年12月20・27日号で。
「21年10大ニュースの30のトピックを俯瞰すると、デジタル、SDGs、地域の3つに集約されるような気がする。これはコロナ禍があってもなくても、業界はいずれ直面する(している)問題で、どれにも対応できていない現状を考えると、やはり根本的なビジネスモデルの転換が待ったなしであることがわかる」
「21年は前年以上にコロナ禍での厳しい環境となり、旅行業は厳しい状況に陥った。来年こそはウィズコロナでの海外旅行再開に期待したい」
「旅行業界各社は緊急事態宣言の影響とその対策に迫られる1年だったのではないだろうか。そのなかでも、新領域への事業拡大やワーケーションによる宿泊の分散化といったポジティブな話題も出てきている。また、新しいテクノロジーを駆使した業務効率化や収益機会の獲得、旅行者の移動にマイルを付与する取り組み、宇宙旅行の成功はとても楽しみな話題だ」
「日本国内の感染状況は大幅に収束しつつあるが、欧米をはじめ、世界の状況はいまなお厳しい。インバウンド、アウトバウンドともに22年も前半は厳しいだろう。一方、国内はリベンジ消費により、観光はかなり回復していく。量(人数)より質(高単価)を追求していく必要がある」
「コロナの影響で観光業界は大きなダメージを受けたが、業界が力を合わせてマーケットを戻していくことが一番重要だ」
「経営者や従業員が持つ知恵やスキルを結集して一丸となり何とか活路を見いだす企業と、人員や取扱規模を縮小しつつ補助金ビジネスを頼りにただ耐え忍ぶだけの企業。この二極化が激しくなっている印象がある。後者における若手人材の流出に歯止めがかからない状況を憂慮している」
「各社で新しい事業領域への取り組みが次々と行われているのは、やはり元々自由な発想力を持っている方が観光業界には多くいるからだと思う。まだしばらく厳しい状況は続くと思うので、私たち航空会社ももっと柔軟な発想で新たな取り組みをしていきたい」
「コロナ下でテクノロジーを駆使した新たな取り組みが一気に進んだ感がある。具体的にはMaaSや顔認証などの観光DXに代表されよう。IATA(国際航空運送協会)は空港での顧客満足や旅客処理能力向上を目指すスマートトラベルプロジェクトを推進し、成田空港ではすでに実用段階に入っている。今後は交通、宿泊、観光コンテンツ、さらにはマイレージなどを横断的に結び付け、旅行のスマート化が加速することとなる」
「日本のツーリズム業界の弱点がコロナによって顕在化した。大手旅行各社の赤字は異常な数字で、これは既存の旅行企業組織が過大サイズであることに起因している。今後、どのようにダウンサイジングしていくのか。業域拡大や店舗の着地需要対応など、すべて後手後手だ。DXによるネットワーク型細分社化しか将来の方向はない」
「オリンピックが国際交流の格好の機会として、またインバウンドのさらなる展開に向けて種をまく好機として大きな期待を抱いていただけに、無観客開催を余儀なくされたことは心から残念に思う。苦境にあえぐ飲食業界と同様に、旅行業界もいまが踏ん張りどころ。オンラインツアーなど新たな試みにはエールを送りつつも、リアルな旅の需要復活に向けて行政と民間が一体となった国家レベルの取り組みと実行力が求められている」
「厳しい市場環境が継続するなかではあるが、人間が集うことと移動することを止めない限り、観光業界は必ず活況を呈する日が来る。希望を持って業界全体で支え合っていくことが、いま最も大切だ」
「宇宙、アウトドア、メタバースなど、ツーリズムの概念が拡張した時代になった。最も大きな変化はフィジカルベースの体験以外にも、デジタル空間での体験などバーチャルな体験もツーリズムとして市民権を得たことだ。今後、人類にとってのツーリズムとは、これまでのモノサシ(距離、金額、物見雄山)では測れない。ツーリズムという言葉はこれからの時代、「意味や体験をデザインする」に変換されていく」
「コロナ禍で旅行トレンドの変化はありつつも、発生から間もなく2年が経とうというなかで、確実に定着したと思えるような変化の実感を得られていない。旅行が控えられたことでユーザー主導型の変化が起こりづらかったこと、それにより旅行会社の取り組みも一方的にならざるを得なかったことが理由として考えられる。今後、ウイズコロナでの旅行が本格化するなかで、ユーザーのトレンド変化がより鮮明になってくると推測する」
「業界がコロナによって打撃を受けたのは事実。しかし業界が抱えている問題が改善に向けて待ったなしで動いていくという希望が見える」
「規模の経済によって中央集権的な旅行業が新型コロナウイルス感染症で瓦解してきた。量より質の観光が生まれ、情報発信も中央集権的なものではなく分散型になっている。オンラインツアーなどは地方の魅力を発信するには最適な手段の1つだし、アフターコロナでもウィズコロナでも引き続き重要な誘客手段であり続けると思う。観光産業、特にインバウンドはコロナ禍によってリセットされ、22年から再び一斉に競争が始まる。ここで生き残れるのはビジョンやパーパスを持った企業。それに向けて邁進していきたい」
「コロナ禍で多くの観光・旅行関連企業が打撃を受け、生き残りをかけて既存事業の枠組みを超えた新たなチャレンジをしていることに大変勇気づけられる。どうしても短絡的な収益を求めてしまうことは致し方ないと思う一方、地域の観光振興や環境問題など、中長期的な視点に立った取り組みの重要性も年々高まっており、企業のリーダーシップが問われている
「デジタル技術の活用がテーマとなり、先端技術に着目されがちだが、その前段階としてまずは社会全体の基礎的なデジタルリテラシーの向上が必要不可欠だ」
「ワクチン接種者が経済を回す機運醸成とそれを支えるDX推進なしには生き残れない」
「日常と非日常、リアルワールドとメタバースの境界を越えて回遊する動きが出てくる。また、シェアリングやサブスクのビジネスモデルによって旅がより身近で手軽なものになる」
「オペレーション効率化や新規領域開拓で生き残りをかけた競争相手との共創が始まる」
「海外から鎖国状態と見られる入国制限を緩和しない限り、日本は世界から取り残される」
「20年と同様に世界が新型コロナウイルスに振り回された1年だった。各国が入国規制や制限を緩和するなど、コロナ2年目として昨年より変化が大きかった」
「長らく続いた自粛生活からの解放や、コロナ収束や海外渡航の回復への期待を願う1年となった」
【あわせて読みたい】21年回顧と展望① 21年回顧と展望② ニュースで振り返る2021年
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