ニュースで振り返る2021年 2年連続でコロナ一色、苦しむ観光業界

2021.12.20 00:00

(C)iStock.com/Talaj

この1年、観光業界人から、どれだけ多くの嘆きを耳にしたことか。今年は、昨年が最悪の1年だったと振り返れるはずだった。しかし、21年も最悪の事態のまま、時間だけが経過していった。

 「最悪」「地獄」「生き延びる」。そんなワードが目立つアンケート結果からは、業界人の苦悩や悲嘆がまざまざと浮き上がってくる。昨年時点では、コロナ禍の先が見通せないなかでもポストコロナ時代に期待をかけるコメントも少なくなかったが、それも減少気味。業界が負ったダメージの大きさが、業績や事業環境だけでなく心理面にも影を投げかけているように感じられる。

 昨年はニュースランキングのベスト10のすべてがコロナ禍関連で占められたが、今年も8位の「脱炭素へ航空業界本腰、新交通も台頭」(235点)を除く9項目がコロナ禍関連となった。2年間でこの結果はもちろん前代未聞だ。

 観光業界のキーパーソンが今年の1位に選んだのは、「緊急事態宣言長引き、観光業界に打撃」(817点)だった。昨年の1位は「新型コロナ流行、全世界の観光業に打撃」で、「疫病がらみの話題が1位になったのは03年のSARS以来17年ぶり」と紹介した。つまり、疫病がらみの話題が1位になることは滅多になかったのにもかかわらず、新型コロナウイルスの登場によって2年連続で1位となり、これもまた前代未聞のことだ。

 「とにかく最悪の1年だった」と振り返るのは東日本旅客鉄道の最明仁常務執行役員国際事業本部長。「コロナ禍で人の心が分断されるなか、観光産業として共感や支持を得ることができなかったこと、メッセージに出すことができなかったこと、何年もかけて積み重ねてきた努力が水泡に帰してしまったことは残念でならない」と悔しさをにじませる。観光は人の移動を伴うだけに、外食産業と同様に世論の厳しい視線にさらされた。しかし、何かあれば必ず不要不急論が蒸し返される状況を苦く感じた業界人は多かったのではないか。

 ブルーム・アンド・グロウの橋本亮一代表取締役は、「こんなにも“生き延びる”ことが大変な時代が来ようとは、全く想像していなかった」と旅行業経営者の胸の内を吐露する。「生き延びるだけでなく、経営基盤の脆弱性を克服する新たな事業展開の必要性を痛感する」という感想も含め、多くの経営者に共通する思いだろう。

 しかし、新型コロナウイルスはこうした思いを無視するがごとく感染拡大を止めず、2位の「国際往来、規制緩和も観光再開に至らず」(574点)や4位の「コロナで旅行・宿泊業の市場退出加速」(413点)といった事態を生んだ。

次世代の顧客失う懸念

 この未曽有の事態が将来にも禍根を残しかねないと懸念するのが、たびえもんの木舟周作代表取締役だ。修学旅行や遠足行事の多くが中止・縮小となり、「子供たちの体験学習の機会が奪われたことだけでなく、次世代の顧客を失うことは、業界にとって将来に影響する巨大な損失。長期的な視野に立った旅育の復活が望まれる」と指摘する。

 教育旅行が受けたダメージには日本修学旅行協会の竹内秀一理事長も懸念を示す。「特に民泊・生業体験プログラムを実施していた農山漁村家庭の受け入れ停止が拡大したことが気になっている。新学習指導要領の実施を見据え、生徒の貴重な学びの機会として学校のニーズが増えていただけに、いつ再開されるのか、コロナ前と同じように受け入れてもらえるのか、懸念される」という。

 6位の「ワクチン接種拡大で電子証明の活用模索」(296点)、9位の「検査や体調管理・・・安心な旅で需要喚起」(209点)はともにコロナ禍で高まった人々の安心・安全意識に関わる項目だ。沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「サービス産業が中心の地方でコロナ禍は地域経済全体の悪化につながっている」と現状を示したうえで、「観光地が市場からの評価を受けるためには安心・安全が重要なキーワードであることから、観光産業全体が日頃から危機管理に取り組むことが重要。また、デジタル化推進を進め、生産性向上に努めることも不可欠」としている。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年12月20・27日号で】

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