旅のユニバーサルデザインの実現へ ユニバーサルツーリズムの新資格誕生<PR>

2021.04.05 00:00

コロナ後の旅行業界が模索する未来への扉を開く新資格、「旅のユニバーサルデザイン(UD)アドバイザー」が昨年9月に創設された。すべての人の旅を実現しようという取り組み。JATA(日本旅行業協会)ユニバーサルツーリズム推進部会などの協力を得て、企画から教材作りまで担った2人の中心人物、日本国際観光学会福祉観光研究部会の竹内敏彦氏と島川崇氏が、旅行ビジネスや旅行業界人にとっての価値と可能性について語り合った。

竹内敏彦氏
JTBトラベル&ホテルカレッジ講師
東洋大学国際観光学部非常勤講師

竹内  すべての国民が共生する社会を実現するため障害者差別解消法が06年に施行され、旅行業界は誰もが旅を楽しめるユニバーサルツーリズムの環境整備に取り組んできました。ところが、高齢者や障害のある人の受け入れに関して旅行会社は消極的な面があります。社員の心にバリアが存在するのです。

島川  旅行業は多くの要素で成り立っており、旅行会社にとっては「うちはよくても受け入れ宿泊施設がない。交通機関が対応できない」と言い訳できます。また日本では、旅程を円滑にこなすことができない人は旅行に参加する資格がないという“障害の個人モデル”の発想があります。しかし現在では、誰もが思うように旅行に参加できないシステムならば、そもそも社会にこそ問題があるという“障害の社会モデル”の考え方が世界標準です。

竹内  国土交通省は旅行で合理的配慮をすべき対応指針を具体例として挙げています。たとえば、空港のグランドスタッフや鉄道の駅員が障害のある人の車いすを押すようなことです。ところが、旅行会社はそれをしない。なぜか。「旅行会社がすべき合理的配慮の例に車いすを押すことが挙げられていないから」というのです。旅行会社の仕事ではない、すべきでないと誤って解釈してしまっているのです。

島川崇氏
神奈川大学国際日本学部教授
日本国際観光学会会長

島川  仕事として明記されていないから、しなくていいという理屈。これも言い訳の1つですね。

竹内  バリアフリー対応を専門領域に押し込めてしまう問題もあります。専門家でなければ対応できないと考え、自ら遠ざけてしまう。しかし、そうではないはず。長年の付き合いがあるお客様から高齢の親と旅行したいと相談されたら、専門家でなくても何とか対応するでしょう。車いす使用のお客様が来店したら店舗前の段差をサポートしませんか。介助の知識や技術は添乗だけでなく、店頭を含め営業全般に必要なものです。

新資格がもたらす可能性とは

島川  福祉の専門家が目指す介護福祉士などの資格はかなり難しい内容です。しかし、サービス業ではそこまでの知識や技術は必要ない。そこでサービス業向けのサービス介助士という資格があり、駅や空港で対応する交通事業者は担当者の資格取得を促進しています。ところが、旅行会社の取得者は極めて少ない。そこでサービス介助士の要素を取り入れつつ、より旅行業に特化した資格を創設することでユニバーサルデザインの考え方の旅行業界への啓蒙と業界人の意識向上を図ろうと考えたのが、旅のUDアドバイザー資格の出発点でした。

竹内  あえて言えば、バリアフリー対応で完璧を目指す必要はないと思います。すべてのお客様に完璧な対応はできなくて当たり前。できる限りのことをする。あと一歩のところを助ける人の手、創意工夫を提供できればそれでいいと思います。

島川  旅の UDアドバイザー資格は、日本国際観光学会福祉観光研究部会、JATAユニバーサルツーリズム推進部会、JTBトラベル&ホテルカレッジ、検定資格の開発や運営を行う一般社団法人ケアフィット推進機構が中心となって創設しました。専用に開発したテキストによる座学講習と実技講習を1日で実施し、筆記試験を経て合格認定となります。試験の難易度設定は合格率7割。合格認定状が発行され、店頭カウンターに飾ってお客様にもアピールできます。

竹内  昨年度、JTBトラベル&ホテルカレッジの学生約130人が受験した試験の合格率は92.8%。向上心があり熱心な学生が後輩として旅行業界に入ってきます。旅行の現場で働く先輩業界人にも奮起してもらいたいです。

島川  コロナによって人と人のつながりの重要性が再認識されました。これは旅行業界にとっては、新たな需要創発のチャンスと捉えるべきです。そういう意味ではポストコロナの旅行ビジネスの再構築のため、人が介在する強みを持った旅行会社が新たに福祉観光市場の開拓に力を入れること。それに役立つこの資格を普及することは大変重要です。

実技講習はケアフィット推進機構が指定する実習会場で行う。中央が同機構の冨樫正義代表

テキスト内容

人とサービスをつなぐ必要性と方法が学べる一冊
  • 1.基本理念
  • 2.UDと旅の関連性
  • 3.高齢者の理解と接遇
  • 4.障害のある人の理解と接遇(車いす利用者、聴覚・視覚・知的障害者など)
  • 5.旅に配慮が必要なお客様(妊娠中、子供連れ、アレルギー、外国人など)
  • 6.補助犬への理解
  • 7.業務の中でのUD(企画、造成、店舗、接遇のポイント、添乗など)
  • 8.旅の素材のUD(航空機、鉄道、観光バス、旅館・ホテルなど)
  • 9.関連法

資格概要

【受講料】1万9800円(税込み)
【教材】テキスト1冊
【実地教習】6時間(1日完結。座学2時間、実技2時間、検定試験1時間、1時間休憩)
【検定試験】マークシート方式の全50問(100点満点中70点以上で合格)
※合格者には認定状贈呈

お問い合わせ

一般社団法人ケアフィット推進機構
東京都千代田区神田三崎町
2丁目13番5号
TEL:03-6261-2339
FAX:03-6261-2330
HP「旅のUDアドバイザー」で検索ください


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