観光バスの倒産・廃業が過去最多 需要激減、安全アピールも見通し厳しく
2021.02.22 00:00
コロナ禍で観光バス事業者が窮地に追い込まれている。昨年3月以降、移動自粛に伴いバス旅行の予約キャンセルが相次ぎ、修学旅行や部活動でのチャーター需要も消失。帝国データバンク(TDB)によると、倒産件数は20年4月から今年1月まで11件と年度ベースですでに過去最多となった。需要低迷を食い止めようと、業界団体は優れた車内の換気性能や安心・安全のアピールに努めてきたが、先行きは不透明でさらなる経営状況の悪化が懸念されている。
倒産したのは、中部観光サービス(沖縄県豊見城市)、十二天観光バス(埼玉県本庄市)、須崎観光(高知県須崎市)、あじさい観光(大阪府堺市)など。競争激化などを背景に業績が低迷していたところ、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけたケースが少なくない。また、廃業した糸島観光バス(福岡県糸島市)など休廃業や解散も増え、TDB によると20年4 ~12月に24件と過去最多を更新した。
コロナ禍はバスが密で危険といった風評ももたらした。GoToトラベルキャンペーンが開始されても利用を控える傾向が続き、効果を享受できていない。イメージの払拭に向け、JATA(日本旅行業協会)関東支部、全国旅行業協会(ANTA)東京都支部、東京バス協会は昨年10月、車内換気の実地見学会を開催した。国土交通省は感染防止対策にかかる経費の助成や資金繰り支援を講じている。
ただ、売り上げの減少幅が大きく損失の穴埋めには至っていない。TDB によると、20年度の利益動向が判明した減収企業150社の約6割が最終赤字となる見通し。同社は「先行きの悲観から事業継続を諦めるケースが増加するのでは」と懸念している。
【あわせて読みたい】宿泊業の倒産、7年ぶり100件台 日通旅行、65年の歴史に幕
カテゴリ#観光・旅行業経営#新着記事
週刊トラベルジャーナル最新号
アクセスランキング
Ranking
-
旅行取扱額で19年超え企業、11社に拡大 10月実績 海外旅行は7割まで回復
-
キーワードで占う2025年 大阪・関西万博からグリーンウオッシュまで
-
「海外旅行は国の大きな課題」 JATA髙橋会長、回復へ政策要望
-
肩書インフレという時代
-
ビッグホリデー、「旅行商社」を標榜 販売店との共栄へ新事業 まず介護タクシー旅行
-
観光産業底上げに国際機関が重要 PATA日本支部、活動を再び積極化
-
旅行業の倒産、24年は低水準 零細企業中心に22件 すべて消滅型
-
『日経トレンディ2025年1月号 大予測2030-2050』 勝負を決めるのは人間
-
海外旅行市場、若年女性がけん引 25年の実施意向トップ 国内旅行でも顕著
-
OTOAが5年ぶり新年会 海外旅行回復や支払い改善促進に期待