ポストコロナの旅行トレンド

2021.02.22 00:00

 この数年のオーバーツーリズムの懸念から様変わりして、今年は有名観光地も見捨てられたようだ。需要回復を願う人気観光地もポストコロナの旅行には特徴がみられる。英フィナンシャルタイムズはツアーオペレーターの今年の商品計画と予約状況から新しい旅行トレンドを伝えている。欧米のロックダウンはまだ終わらないが、業界にはワクチン接種が始まり、抑圧から解放されて爆発しそうな需要への期待がある。

 20年は国境が封鎖され、多くの国で国内旅行ブームが起きた。夏は人気ビーチやリゾートが混雑した一方で、高級な市場や冒険的な国内旅行の需要を生んだ。元軍人が昨年10月に設立した英国の旅行会社はこの春にスコットランド高地の豪華ガイド付き遠征ツアーを提供する。移動ベースキャンプでシェフが野外のバーべキューを準備し、ラフティング、岩登り、カヤッキングなどを提供し、その間をランドローバーで移動する。

 ある旅行会社には一生に一度の純粋な冒険的外国旅行の問い合わせが増えた。パンデミックが刺激した面があるが、人生の晩年を迎えた世代には遅くならないうちに体験したい旅行があるものだ。昨年は困難だった50歳の誕生パーティーを大勢の客を招いてアフリカで主催したい顧客がいる。別の旅行会社で昨秋、最も売れたツアーは48日間で6カ国15の世界遺産を訪れるシルクロード冒険旅行だった。今年の注目は南極で、夏のセーリングは現在、クルーザーが足りないほど注文がある。12月4日には完全な日食が見られる。

 パンデミックは最近、離島の隠遁生活をさらに魅力的にした。現在、顕著に需要が増えている地域はモルディブとカリブ海だが、地中海の島々(特に別荘利用)も需要が増えた。特にモルディブは海上油流出事故からツーリズム再建に努力してきて、「旅行者の安全な安息地」をブランドとして、米英のパンデミック第2波にもかかわらず検疫なしですべての国から旅行者を歓迎する。ただし旅行者は到着前96時間以内にPCR検査を受ける必要がある。いくつかの島は独自の検査システムを導入し陰性が判明するまで部屋に隔離する。

 ロックダウンの体験は過密の心配がない広い空間への憧れを生み、遠く人の少ない土地を今年の願望リストの上位にしている。グリーンランドやモンゴルに次いで人口密度が低いナミビアだ。レンタカーで私有保留地にある砂丘キャンプで砂漠体験を提供する。ボツワナも人口密度が低い国で、新たなサファリパークラッシュで人気が出そうだ。

 そして、スロートラベルは今年の主流になる。旅行回数を減らし長い休暇を取ることでCO2排出を減らし、地域経済に貢献しながら異文化に正しく触れる時間を取る。OTAのイードリームの調査では、昨年まで夏の旅行は7~13日が普通だったが、今年の予約は32%が14日、35%がそれより長くなった。ウオーキング(歩く)旅行は滞在地と一体になる最善の方法でもある。これまで人気の低かったアルバニア、マケドニア、スロべニアなどに物産購入やワイン体験を含めてガイド付きウオーキングツアーを計画する旅行会社もある。ウイルスは半ばあるいは完全に引退した人にスロートラベルの計画時間を与えたようだ。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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