AIと生きる世界
2021.02.01 08:00
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年初にいくつかの映画をまとめてアマゾンで見た。コロナ禍だからとはいえ、このような時代が来るなどとは20年前には想像さえしなかった。数ある映画作品のなかで、人工知能(AI)やアンドロイド(ロボットやクローン)をテーマとした作品が多いことに気がついた。それだけ人々の関心が高いということがうかがえる。その一方でいまさらではあるが、一体AIは何の役に立つのか、本当に必要なものなのか、随分と考えさせられた。
ずばぬけた記憶力、条件(インプット)にあったものを瞬時に探す出すリサーチ力、与えられた課題に対する計算スピードの速さ。これらにおいてAIは人間の能力をはるかに超えている。だが、記憶力はデータを蓄積する媒体だからよくて当たり前で、リサーチ力も条件をもらって検索実行しているだけだ。計算スピードの速さも、決められた単純作業(計算処理)を機械的に実行しているだけだから人間より速くて当然といえる。
AIは条件、仮説、テーマを人間から与えられて初めて動ける。人間がいないとAIは真価を発揮できないのだ。でも、もしAIが自ら意思や感情を持ち、それらに基づいて行動するようになったらどんな社会になるだろう。これこそが「2001年宇宙の旅」に端を発する、AI映画に共通したテーマである。
人間とAIの根本的な違いはどこにあるのか。AIはわれわれの未来に何をもたらすのだろうか。私なりの理解だが、AIの価値はインプットをもとに迅速により正しい予測=アウトプットを出すことにある。つまりインプットがゼロ、もしくは間違っていたら正しい予測はできない。インプットとアウトプットは通常数式で表せる。原因があり結果があれば、それを最もうまく説明する変数の数と種類を探り出し、何度か異なる計算式を試し、そのなかで最もうまく説明がつく数式を採用すればよい。
ただ、ここで問題がある。インプットとして使えるデータはすべて過去のものだ。過去から未来を解くのは統計学(数式)の領域である。発生確率も計算できる。ゆえに数式は、はまると結構面白い。
だが、本当に過去から未来を予測できるのか。答えはケースバイケース。つまりそういえる時もあれば、いえない時もある。なぜなら、これまでとまったく違う現象が発生すれば、その新現象発生前につくった数式はほぼ無意味となるからだ。ゆえにAIは常にその脳細胞部分を入れ替える、つまり書き換えることが前提となる代物だ。実際どのAI映画でも、劇中に脳細胞といえる部分を書き換えるシーンが幾度となく出てくる。これも人間が判断して行っている。
人間の英知は素晴らしい。スピードが速いからでも正確だからでもない。そんなことに気がつくかということに気がつけるからだ。つまり有意な違いの発見にある。そのようなことさえできるAIもあると聞くが、果たして本当なのか。単に総当たりをしてそれらしい有効な変数を割り出しているにすぎないのではないのか。AIが全能だとすれば、人間にはもう存在理由がなく、それこそ映画「マトリックス」の世界のように全人類が機械につながれ、ただ映像を見ながら一生眠っていればよくなる。
私はAIを否定はしない。が、人間が人間らしくいることができるのは、自ら状況を把握、判断して、即行動し、自己否定できる唯一の生物だからだ。いまほど人類が困難に直面したことはない。厳しいのは旅行業界だけでもない。ただ、いま行動できない者に未来は永遠に来ないことだけは確かだろう。
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荒木篤実●パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。マー ケティングとITビジネス のスペシャリスト。ITを駆使し、日本含む世界の地場産業活性化を目指す一実業家。
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