持続可能旅行と消費者行動

2020.11.23 00:00

 欧州では夏の旅行シーズン前に域内旅行が緩和され明るさが見えたが、秋の感染拡大でかき消えた。感染対策優等生のドイツは9月に近隣国への渡航警告を発したが、10月に国内の感染リスク市町村が急増。リスク地域からの人を宿泊禁止にする州も現れ統制は乱れたが、政府は全州をまとめて11月末まで旅行自粛、観光宿泊不可など部分的ロックダウンに踏み切った。

 旅行業者の短時間労働給付を今年末まで政府に延長させたドイツ旅行業協会のホームページには、業界の厳しい現状や規制反対運動などの情報が見られるが、サステイナビリティー活動も忘れてはいない。同協会主催の環境コンテスト「エコトロフィー」は今年も実施される。

 環境保護と社会に貢献する国内外プロジェクトを表彰する1987年創設の伝統ある賞で、今年は特にテーマを観光客マネジメント、誘致、観光ホットスポット負荷軽減などに可能性を秘めるデジタル化と持続可能性に定めた。教育、持続可能性情報の可視化、ゲーミフィケーション等の分野でもデジタルなサービスは国連のSDGs17項目達成に寄与する。12月8日の年次総会で授与され、すべてオンライン開催となる。

 持続可能な旅行商品と消費者行動の関係について明確な情報は少ない。18~19年に旅行研究所FURが実施した持続可能な休暇旅行と行動に関するアンケート調査では、長期旅行(5泊以上)と短期旅行(4泊以下)に指標を分けた。カーボンオフセットのある旅行を予約した人は長期で2%、短期で6%。環境認証ラベルのある宿泊施設や旅行会社を重視したという回答者は、長期で6%、短期で8%であった。

 サステイナビリティーを予約の決定要因としたのは長期で4%、短期で8%。複数条件の1つと回答した人は長期も短期も23%だった。国民の半数以上の56%が持続可能な旅行が好ましいと思うものの、実際の旅行計画では行動に反映されずギャップは大きいと結論している。

 今年に入り1月と5月にドイツ旅行業協会のビジネス旅行部会がビジネストラベラーの旅行を調査した。コロナ流行直前には回答者の91%がサステイナビリティー旅行は非常に重要と答え、出張計画時に配慮すると回答した。コロナ拡大時には半数以上の回答者がその優先度は下がるとしたが、36%は重要度はより高まり、11%はそう行動した。

 ビジネストラベラーが特に重視した点は持続可能性の高い宿泊施設の選定であった。環境に優しい宿泊施設を選び、気候保全のためには追加支出もいとわない。しかし感染リスク回避のため再び車を利用するようになり、車と鉄道の競合が起きている。

 7割の企業はコロナ以前には持続可能なビジネス旅行を常時重視し、なかでもビジネストラベル専門旅行会社を活用する企業は非常に高い環境意識を有している。エキスパートがエコ宿泊や交通手段を選定し出張者の不必要な時間浪費を減らすビジネス旅行専門業者の利用を旅行業協会は勧めている。

 日本政府は2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言した。サステイナビリティーの重要性を消費者はより意識するようになるが、持続可能な旅行商品購入が当たり前になってほしいものだ。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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