あるべき地方創生の姿

2020.11.23 08:00

 世界的に海外旅行ができなくなって久しい。となれば、当然国内旅行をと旅行会社も消費者も考えるのは自然の流れで、いまこそ地方創生の本領発揮である。現状はどうなっているのか、自分の実体験をベースに以下考察させていただこうと思う。

 東北地方は先の震災で甚大な被害を受けて以来、復興への努力が続けられている。最初に視界に入ってきたのはコンクリート防波堤の多さである。ここまでやるかというぐらい三角柱形状の巨大な防波壁があちこちで海と陸を遮断。せっかくの景観が少し残念な感じであった。一方、トンネルが多く、海の絶景は岩手県北側に集中しているが三陸鉄道の復活は明るいニュースだ。浄土ヶ浜や中尊寺金色堂など数々の観光名所がある上に海や山の幸にあふれ、昨今のGoTo人気もあいまって、さぞ賑わっているかと思いきや、そうでもなかった。

 まず、人気と思っていた「気仙沼お魚いちば」に全然人がおらず、別の新しい市場(土産物屋)が若干賑わっている程度。市場の活気のようなものを期待して都会から来た人には不満が残る内容だ。これならば、東京から至近の静岡・沼津港市場で、新鮮なさざえや貝類を買い、その場で網焼きを体験する方が満足度は高い。

 食事は人気のローカル居酒屋をホテルの人に教えてもらった。都会ではまず食する機会もないような珍しく新鮮な食材があり、店の人とお客さんが和気あいあい。旅の極意は非日常体験にあると考えれば成功するケースといえるだろう。お客と店の距離が近い気さくな感じがイタリアのローカルレストランにも似て好感をもった。

 近畿には京都や奈良といった競合があるなか、和歌山は実際に動くことで県内南北、紀州の縦の長さを体感。移動に時間がかかったものの、逆にその移動する間の景色の雄大さが楽しく、かつ都会の喧騒を忘れさせてくれるに十分なスケールだ。特に海岸線はオーストラリアのグレートオーシャンロードにも似ており快適なドライブが楽しめる。

 広大な川幅の熊野川、十分な高さの那智の滝といった数々の大自然と名所旧跡、東北に負けない新鮮で豊富な食材も売りだ。なかでも、勝浦の近海マグロを使った冷凍ではない新鮮とろとろ感触のマグロ丼は、大分でいけすからその場でさばいてもらう筋肉しっかり甘みたっぷりの関サバ同様、わざわざそれを食べにいくためだけに旅する価値のある料理だ。

 両地域の視察からまず、海と山を両方持っている県は強いと実感した。こういう素材の素晴らしい地域での食事体験はお金に代えがたいものだ。ただ、どのお店がいいのかというのが県外からの来訪者には難儀だ。こればかりはグーグルに聞いてもわからない。ローカルに強く、信じられる人に尋ねるのが一番。自分が都会でうまいと思って食べていたものが一体何だったのかとさえ思える新鮮な素材。京都や奈良にさえ、ここまでの料理はない。そう思えた。ここに地方創生の1つのヒントがあるように思う。

 そして、情報は利用したいと思う人に届かない限りただのゴミと同じだ。届けるためには、チラシや広告は無意味とまではいかないが相当に効率が悪い。そこでITの力やエキスパートの力を活用すべきだろう。昨今、言葉や形が先行しがちな日本カルチャーだが、本来は本質を極め、ターゲットを絞るのが先決事項だ。和歌山の醤油会社によれば、最近は欧州からの直接買い付けも多いと聞く。本物の良さを、それを求めるユーザーに、正しくタイムリーに伝達する。これこそマーケティングの本質だと思う。

荒木篤実●パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。マー ケティングとITビジネス のスペシャリスト。ITを駆使し、日本含む世界の地場産業活性化を目指す一実業家。

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