航空産業は再構築が必要だ
2020.10.26 00:00
世界の国際航空会社は生き残れるか。その可否は政府が握っているようだ。3月に米国政府は航空産業に250億ドルの一般的補助(地方路線維持の約束を含む)と雇用維持のために250億ドルの給付を決めたが、この支援パッケージは9月末に終わった。アメリカン航空などが大量解雇を予告して250億ドルの追加支援を求めたが成功せず、10月から大手だけで4万人以上が一時的に職を失う。
欧州ではルフトハンザ・ドイツ航空でさえ90億ユーロの政府支援を受け、ルフトハンザグループ全体で2.2万人を解雇、残る13万人のうち約8.7万人が政府の雇用維持制度による支援を受ける。航空産業の著名コンサルタントのH・ホラン氏は、合併による独占、寡占構造が国際航空会社の危機対応力を弱体化させており、政府によるリストラ(産業の再構築)が必要という。フィナンシャルタイムズ紙から同氏の言説を以下に要約する。
航空産業にはこれまで経営の失策(需要を超える拡大)、燃費の急騰、不況、戦争、テロなど多くの重大な危機があったが短期に復活した。健全な需要が存在し、深刻な財務危機は一部に限られ、一時的な負債救済により十分な流動性があったからだ。規制当局は消費者と債権者保護、そして長期的な経済安定を重視し、資本市場と破産裁判所は生存能力ある資産を速やかに再生させた。
激しい競争の存在は拡大に慎重な航空会社に報いた。しかし過去15年、危機の克服を可能にした環境はすでに存在しない。政府は30年続いた消費者支援、競争政策支持の立場を放棄した。規制機関は積極的にお気に入り企業の市場価値最大化に努め、政治的に抜け目なく動いた航空会社を助けた。いまは世界で最も重要な市場の多くが“倒産させるには巨大すぎる”航空会社に支配される。
10年来の産業統合で航空産業の寡占・独占構造は確立、多くの競争者は消え、予想外の悪影響を自力で吸収する能力もインセンテイブも失われた。競争の圧力から解放された航空会社は生産性向上に必要なイノベーションから短期的な利潤最大化に経営の重点がシフトした。“倒産させるには巨大すぎる”航空会社のオーナーたちは、会社がどん底に落ちることはないと信じ数十億ドルの利益を自分の懐に入れた。流動性資産は流出し、航空業界が要請した巨額の納税者の資金さえ財務の安定には少なすぎた。現在、航空産業はこれまで想像された以上の根本的再構築が必要で、経営陣入れ替えや路線廃止で解決できる状況でない。
需要崩壊は数年続く見通しで、航空産業(航空機メーカー、空港、サプライヤー含む)はチャプター7の“もはや継続事業体でない”意味で破綻している。速やかな再構築が必要だが、それは脱落の恐れがある民間資本でなく政府の資金と監督によってのみ可能だ。政府の役割は避けがたい雇用喪失とサービス削減を最少にする場合のみ正当化できる。
政府の救済策は便数と路線選択の縮小を伴い運賃値上げが確実に起きる。以前の産業再構築で重要だった多くの競争者はいない。効果的なワクチンが奇跡的に早く開発されれば別だが、世界的に需要が完全に蒸発している状況では供給と雇用の大幅な縮小が不可欠だ。巨額の費用と犠牲が公平に負担されることを納税者に納得させ、効率的な産業国有化と再構築が必要だ。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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