サバイバル経営術 コロナショックを生き抜くために
2020.09.21 00:00
新型コロナウイルスの影響を受けた観光関連分野での廃業・倒産が目立つ。生き残りを模索し、売り上げ半減を前提とした事業計画を策定したり、休業状態で体力温存に努める企業もある。いま求められるのは長期にわたる影響をしのぎ切るためのサバイバル経営術だ。
新型ウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の対象が7都道府県から全国に拡大されたのは4月16日。その翌週の24日にはカプセルホテルを運営するファーストキャビンおよび子会社4社が東京地方裁判所に破産手続き開始の申し立てを行った。航空機のファーストクラスをイメージした高級感を売りものに利用者を獲得してきたが、沈静化しないコロナ禍の犠牲となった。フランチャイズで展開する各宿泊施設の営業は各オーナーの判断に委ねられているが、直営施設5店舗は営業を終了している。
ファーストキャビン倒産の3日後の27日には、ホワイト・ベアーファミリーのグループ会社としてホテルを全国展開するWBFホテル&リゾーツが民事再生法の適用を申請。さらに緊急事態宣言解除から約1カ月後の6月30日にはホワイト・ベアーファミリーおよびWBFホールディングスが大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。
ホワイト・ベアーファミリーは、海外旅行と国内旅行のいずれも、感染拡大による売り上げの急減に襲われた。加えて旅行キャンセルによる返金が資金繰りを圧迫するという二重苦に見舞われ、経営が行き詰まった。事業を継続し再建を目指すホワイト・ベアーファミリーは、先に倒産していたWBFホテル&リゾーツを含むグループ3社で星野リゾートとスポンサー就任についての基本合意書を締結し、事業再生の可能性についての協議を行っている状況だ。
新型コロナウイルス関連倒産は観光関連分野で増えつつある。帝国データバンクによると、関連倒産は全国で477件(8月31日現在)。業種別では飲食店66件、ホテル・旅館52件などとなっている。東京商工リサーチの調べでも関連倒産は全国で432件(8月25日現在)におよび、飲食業が65件、宿泊業43件。いずれの信用調査会社のデータでも、飲食と宿泊にアパレルを加えた3業種の倒産件数が突出しており、とりわけ飲食・宿泊の2業種を抱える観光関連分野の苦境が目立つ。
宿泊業の倒産に関しては、西日本最大級のスキーリゾートおよびホテルを経営してきた瑞穂リゾート(広島)や、佐久市を代表するホテルを経営してきたホテル一萬里など、地域の観光産業を支えてきた企業や、青森市の青森国際ホテル、別府温泉のホテル三泉閣といった地域を象徴する老舗も含まれている。
固定費の負担が極めて重い施設ビジネスの宿泊業に比べれば、まだ時間を稼げる旅行業の倒産件数は現時点で多くないが、ホワイト・ベアーファミリーは新型ウイルスの影響による倒産としては最大規模(負債278億円)となり、飲食・宿泊業だけでなく旅行業も含めた観光産業全般の苦境を象徴するケースとなった。
また旅行会社の場合、倒産件数に反映されない自主廃業のケースも多いとみられる。全国旅行業協会(ANTA)によれば、今年2~5月の正会員退会者数は合計155社・入会者数は72社で差し引き83社の減少となっている。昨年同期は132社退会・77社入会の55社減だった。今年は退会者数が入会者数を上回る傾向がよりはっきりとしてきた。
JATA(日本旅行業協会)も5月と6月の退会者数が61社(正会員・協力会員・賛助会員)だったが、このうち全体の6割を超える38社が退会理由を旅行業廃止または事業廃止としている。
倒産という形にしても廃業という選択にしても、新型ウイルスの影響が大きく影を落としていることは間違いない。
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