家事分担とチーム運営

2020.05.04 00:00

 この原稿が出る5月も在宅勤務が続いているとすると、あらためて家庭生活を見つめ直した人も増えたのではないだろうか。今回は夫婦の家事分担について書いてみたい。

 私は夫との二人暮らし。互いの仕事に口出しは基本しないが、家事分担は話し合う。最近は夫の仕事が忙しいので6対4で私が多い。でも私が好きに料理した後の片付けを完璧にしてくれるので毎回感動する。

 そんななか、友人たちと話していると、共働きでも家事分担は妻9割、夫1割という夫婦が多くて驚いた。爪切り置き場も知らず、スーパーの買い物も頼めないと愚痴を言う。よく聞くと、最初からどうせ時間がかかるからと諦めていて、無意識のうちに不満がたまって爆発している。言えばいいのではと思ったけれど、多分ちょこちょこ言ったところで変わらない。そこで、ステップに分けて伝えることを提案したら、たった5日で友人3人の家事分担に良い変化が起きた。

 まず自分が行っている家事を把握し、優先度を付けて家事自体を減らす(必要以上の家事は趣味)。減らした家事の中で夫が好きそうなものをゆっくり教える。嫌々ではなく、楽しそうに教えるのがコツだ。任せた仕事は、すぐに完璧を求めない。数回、数カ月かけて完成していけばいい。どうにも減らない分や分担しても大変な分はどんどん家電や外注に頼る。ポイントは、夫を教育するのではなく、チーム化することだ。

 これは仕事でチーム運営をしたことのある人ならば、誰もが経験しているはずだ。違う部署からきた新しいメンバーに仕事を教える時の手順と一緒。どんな人も最初から完璧にできるはずがない。ランチトリップで創業メンバーから他のスタッフに仕事を任せてチーム化した時の方法に似ている。妻側は教えることを面倒と投げてしまうことが多いが、相手にしてみれば知らないことなので、責められても困る。

 やりとりの中で「昭和の親世代の影響が大きいから、うちの夫も今後の日本男性も変わらなそう」と嘆く友人もいた。私はただ驚き熱くなった。変えるのは誰でもない、この世代の私たち。まさに私たちが当事者なんだよと。

 これは家事に限らず、いろいろなことにいえると思っている。たとえば、生理や出産の辛さについて理解してほしいと願うのなら、説明から逃げるべきではない。「恥の文化」の線引きは難しくはあるけれど、説明しない限り日本はいつまでもジェンダー後進国だ。私はアジアを含め世界中で言われてきた。「日本は大好きだけど、女性としては辛そうで住みたくない」と。

 古い考えを持つ会社の上司や政治家に怒ることは多いし、説明を諦めたくなる気持ちも理解できる。でも、自分が選んだパートナーくらいにはきちんと論理的に説明できるはずだ。いまの日本の若い女性たちは、家庭や社会で困った時に助け合えるチームをつくるために、相手に説明できるはずだと私は思っている。

松澤ダンフォード亜美●コミュニティーの企画や活性化に関するアドバイス・実務を行う。08年に料理から異文化を理解するイベント「Lunch Trip」を立ち上げ、同NPO法人共同代表理事。年間約7カ国を旅しながら働く。