英国議会によるトーマスクック歴代CEOへの聴聞
2019.12.23 00:00
トーマスクック倒産は政府が立ち往生した顧客の帰国費用に数億ポンド負担し、失業者が2万1000人も生じたことなど議会も無視できない大事件だった。議会の特別委はトーマスクックの直近3代のCEOと監査人の大手会計事務所代表を招致して激しく詰問した。聴聞会にはトーマスクックの制服を着たパイロットと客室乗務員も参加した。以下はフィナンシャルタイムズ記事から要約した。
マニー・フォンテンラ・ノボアはトーマスクックのCEOを03年から12年まで務めた。07年のマイトラベルの高額買収が倒産の契機になったことで議員からの批判は彼に最も集中した。質問に対しては自分のCEO時代の経営戦略を弁護し、その主要な意思決定が倒産につながったことを否定した。18歳から勤務した会社がなくなったのは大きな悲しみだが、倒産は辞めてから8年後のことで、原因は9月に債権者と主要株主から資本再構成の条件が合意されなかったことだと断じた。
フォンテンラ・ノボアの時代は業界挙げて同業者合併に向かっており、マイトラベルとの組み合わせは英国で新しい市場へのアクセスや広範なシナジーを生み出し、当時は実店舗の販売が致命的に重要と考えられていたと述べた。多額の負債について「もしその金額が過大と考えたなら、後のCEOが19年までに負債処理の手段を講じるべきだった」と答えた。伝統的パッケージ旅行時代は終わったとした後任CEOの意見に反論し、トーマスクックが合理化に邁進する間、ジェット2やオンザビーチなどライバルが急速な成長をしている実例を挙げた。
12年に異業種から迎えた後継CEOのハリエット・グリーンは、市中店舗網縮小、借金返済に努力しデジタル販売を推進した。彼女は「就任時に1000店舗の会社に標準のインターネット接続さえなかった」と述べた。在任中のことで後悔はあるかという質問に、「前任者から引き継いだ戦略は業界の方向と全く異なるものだった。それを変えるのに1日22時間、28カ月奮闘した。私の責任はそれを完成できなかったことだ」と答えた。なぜという質問にしばらく沈黙して、14年11月に「会長に呼ばれ、私が変革を始める立派な仕事をしたが、この戦略推進を伝統的旅行業界人に任せたいと言われた」と答えた。
この業界人のピーター・ファンクハウザーは最後のCEOになった。委員会で彼は危機に瀕した同グループの資本再構成に関与しなかった政府を非難した。また、フォンテンラ・ノボアが残した巨額の負債は、改革実行で短期に解決できるレベルではなかったと弁明した。元財務担当役員のB・スコットは、マイトラベルののれん11億ポンドの償却を早期に終えなかった理由を繰り返し質問され、業績は順調に回復していたが18年の100年に1度の熱波が需要を壊滅させたことが主な原因と答えた。
委員会は07年からトーマスクックを監査してきたPwCなど4大会計事務所も破綻に加担したと糾弾した。監査人が財務の重大なリスクと懸念を提起しながら収支報告書は適正と報告していた。11年以降の役員の高額なボーナスを含む異常な支出、マイトラベルののれん会計処理に異議を出すべきだったとし、また監査業務を外れて役員の報酬について助言したことの違法性が追及された。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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