グアムの盛り上がり再び、座席供給量が急回復
2019.11.04 00:00
日本からグアムへの旅行者の流れはこのところ、かつてのような勢いを失っていた。しかし、ここへ来て、チャーター便による航空座席供給量の補強などの成果もあって、日本人旅行者数が増加に転じている。日本人にとって最も手軽で身近なリゾートデスティネーションであるグアム。再興は近いようだ。
グアムの日本人市場はここ数年間、残念ながら勢いを失っていた。旅行者数は、12年こそ東日本大震災があった11年の反動で前年比2桁増となったが、それ以降、昨年までずっと減少傾向が続いた。
17年は特に北朝鮮のミサイル発射問題で客足が落ち込んだ。最盛期には100万人を超えた日本人旅行者数は18年56万3220人にとどまっている。旅行者数が減少傾向にあった13~18年は航空座席供給も細っている。13年6.4%減、14年7.2%減、15年9.3%減、16年7.8%減、17年12.3%減、18年15.6%減と、需要と同じかそれ以上に減少。供給量の減少が需要減退をさらに加速させてしまった。
しかし、航空座席供給を取り巻く環境は、新たな局面を迎えつつある。供給量の拡大で需要減少にピリオドを打ちたいグアム政府観光局(GVB)や、依然としてパッケージツアー比率が高いグアムを重要方面としてあらためて位置付けた旅行会社などの努力により、増加傾向に転じているからだ。
GVBによると、今年のゴールデンウイーク期間中に運航されたチャーター便は、前年同期比9.4倍の1万2467席(68便)に達し、同期間の日本人旅行者数は55%増の2万7813人となった。チャーター便は繁忙期の8月も前年を3割上回る2万5934席が供給され、19年のチャーター便は計画も加味すると9月時点で前年より353便・6万7543席も増えて前年比80%増に相当する15万2489席まで拡大する見通しだ。 GVBは16年から旅行会社や航空会社にチャーターの実施を後押しする各種支援策を開始。以降、告知やPRを続けてきた。これが定着し、19年に花開いた形だ。
定期便は今年、前年を11%上回る72万2015席。チャーター便を合わせると87万4504席まで回復する見通しだ。これは前年比18.8%増で、13万8231席もの増加に相当する。これに連動して、19年に入ってからの日本人旅行者数は順調に推移している。伸び率は1月40.0%、2月25.2%、3月18.4%、4月19.5%、5月14.0%、6月14.8%、7月19.8%で、1~7月の累計でも前年同期比21.9%増の36万8613人となっている。
こうしたなか、航空会社の供給拡大の意欲も継続している。ユナイテッド航空(UA)は10月28日から中部/グアム線を増便しダブルデイリー体制とするのに加え、関西/グアム線でも12月~来年3月まで3便を増やし週10便に増やす。
今夏に来日したGVB理事会のソニー・アダ会長は、「旅行会社のサポートを受け、このところの訪問者減少を再度増加させることができた」と関係者に感謝を述べた。
旅行者数の増加だけでなく消費額の増大も期待される。近年、グアムでは高級ホテルの開業や既存ホテルのリノベーションによるグレードアップが進む。航空会社もグアム路線に最新のビジネスクラスを備えた機材を投入するなど、グアムの高級化路線を後押し。GVBでは「ワンランク上のグアム旅行」のプロモーションを展開しており、消費単価の高いシニア層や、まとまった人数で来島するためグループ当たりの消費額が大きくなるファミリー層、あるいは挙式参列者を含むウエディング需要の取り込みを強化。旅行会社もラグジュアリーの商品化を進め、ビジネスクラス利用商品の拡充を図ったりしている。
量とともに質向上へ
グアムのグレードアップは旅行者側も望んでいる。GVBが18年にグアムを訪問した旅行者を対象に実施した調査によると、グアム旅行の予算はここ数年上昇しており、旅行グループごとの予算額は15年の約1475ドルから18年には約2272ドルまで増えている。1人当たりの予算額も同様に、15年の約731ドルが18年には約971ドルとなった。
グアムでの過ごし方も、よりゆったりと現地での消費を楽しむ傾向があり、あらかじめ支払い済みの費用のうち、宿泊施設の予算だけを取り上げると15年の約716ドルに対し、18年は約820ドルだった。現地到着後に支払った消費内容を見ても、ホテル内の飲食消費額は12年以降右肩上がりで、12年の33.1ドルが18年には60.59ドルと8割も伸びている。オプショナルツアーやアクティビティーは右肩下がりで推移してきたが、16年の64.8ドルで底を打ち、17年83.7ドル、18年92.4ドルと反転した。
事前に支払った予算と現地での消費を合わせたグアム旅行全体を通じた消費額(1人当たり)も15年以降伸びており、15年の約1174ドルが18年には約1499ドルと3割近く増えている。これらのデータが示すように、グアム旅行は量的にも質的にも向上していく方向にある。この方向性が変わることなく、かつてのような日本市場の盛り上がりが実現することは、旅行業界共通の期待である。
カテゴリ#海外旅行#新着記事
キーワード#グアム#新着記事
キーワード#グアム政府観光局#新着記事
週刊トラベルジャーナル最新号
アクセスランキング
Ranking
-
箱根でロボット案内の実証実験 訪日客増でスタッフ確保に課題
-
来たれ!クルーズブーム 日本船建造ラッシュをてこに
-
「成長はリスクを取ってこそ」 カブクスタイル砂田CEO、HafHで第2ステージへ
-
HIS、旅行業の社内カンパニー設置 持ち株会社制移行を見据え
-
主要旅行業者の6月取扱額、国内・訪日が19年比8割回復 募集型との差大きく
-
高騰する米大学の授業料
-
HIS、コンテナホテルに出資 株式20%取得 地方への誘客拡大
-
交通空白解消へ概算要求274億円 ライドシェアで地域と観光の足を確保
-
ヤマト営業所で手荷物預かり 難波に自動搬送型の保管システム
-
産官学連携ツアーで完売目指す 阪急・日大・三島市 マネタイズのモデルを提言へ