素人を集める在宅エージェント会社インテレへの批判
2019.10.21 01:00
![](https://www.tjnet.co.jp/wp-content/uploads/2019/10/tjo-social-media-3846597_640.jpg)
トラベルウイークリー誌(TW)によると、3年前に英国に進出し急成長した米国の在宅エージェント会社インテレトラベルが業界を騒がせている。同社は旅行業未経験者だけを集める新しい事業モデルですでに2500人と契約している。旅行業界はこのような旅行会社の存在、また英国旅行業協会(ABTA)入会が旅行エージェント本来の価値を貶めると非難した。さらに最近発生した事件で事業モデルに疑問が浮上、元同社エージェントを含む業界人から痛烈な批判がTW誌に殺到した。
8月にインテレは加盟エージェント2人(本業はリクルート業者とフットケア業者)をフランチャイズ契約違反で除名した。理由は彼らが同社の許可を得ずに勝手に自らのSNSで20人を集めて別の社名でグループを結成し、それを秘密にしていたことだ。除名された2人はインテレのエージェント支援システムの欠陥を指摘し、同社経営に関する論評が本格化した。
続いて、有名なテレビタレントがインテレに加盟して自らがエージェントを育成するとして素人50人の募集を発表したことも物議を醸した。明らかになったのは、インテレに加盟した旅行業未経験者がそれぞれ動機は違うが自分のグループに新人をリクルートしていることだ。テレビタレントの場合、リクルート1人につき35ポンドがインテレから支払われることが明らかになり、同社事業が旅行販売より会費を支払う会員を増やすマルチ商法ではないかとの疑いが出てきた。
インテレの在宅エージェントになるには、加盟料142ポンド、ブッキングエンジンのアクセス料として月額会費32ポンドがかかるが、同業他社より簡単で負担が少ない。加盟者は同社フランチャイジーとして独立事業者になる。ツアーを販売すれば、サプライヤーからの手数料の70%を得るが、目標額を超えれば80%に増額される。強制的な販売ノルマも推薦サプライヤーへの送客強要もない。退会も自由で費用はかからない。
TVタレントはSNSで、「旅行を愛しお金を稼ぎたい人、私と一緒に働きたい人を雇いたい」と広告した。プロジェクトに参加する人は「経験不要、自分の仕事、家族との約束を守りながら、自宅で楽に旅行業者になるよう私が監督する」とした。ATOL協会の法律顧問は「旅行業に全く経験のない人間が、素人50人の業務を管理することはマルチ商法に近いように見える」と述べた。
インテレは反論する。「新人リクルートは本業とは別で、信用と資格確認を終えないとエージェントと認めない。旅行業を志す人々に在宅エージェトとして旅行事業に参加させるのは、旅行産業の成長を目指すわが社の戦略だ。英国旅行市場は革新が必要で、少なからぬ異業種の人材が旅行販売に従事する現実を認めるべきだ。研修を修了しない限りパートナーと取引させない。セレブでも例外なくプロフェッショナルな行動を求める」
在宅エージェントの多くは旅行会社のマネジャー経験者といわれる。英国旅行市場に2500人の素人が獲得できる十分な顧客があるとは思えない。インテレの収入源が旅行販売より加盟者からの会費が主体になれば、マルチ商法の批判は当然だろう。これはギグエコノミー時代の旅行業の姿なのか。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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