仕事と情熱、これは切っても切れないものだ

2019.06.03 08:00

 アムステルダムでプレゼンする機会があった。突然ふられたので少し焦ったがこの手のサプライズは慣れていたので、ほぼ淡々とポイントだけ話をした。他にもプレゼンターはいたが、彼らと自分のプレゼンを比べて気がついたことがあった。私以外はすべて若い人で、それはもう熱心に、そして一生懸命に自分の仕事ぶりをなりふり構わずアピール、その様子は時にかわいいとさえ感じるものであった。

 どうやら、日本は働き方改革とやらが官邸主導で進められているらしく、なにやら私の周りですら騒がしい。日本の取引先を訪問、新たなビジネスチャンスを提案した際など、「政府のお達しなので」と言って、せっかくの提案にものれんに腕押し。一体なんのための、誰のための改革なのかと感じるのは私だけだろうか。そもそも働き方をうんぬんしている時点で、もう終わっているとも思える。

 働き方の違いについて、欧米の会社で働いてみてわかったことがある。残業している人が実際に少ないということだ。が、残業する人も少なからずいる。決して誰からにやらされているわけではない。自分で「いまは残業が必要」と判断し実行している。

 基本にあるのは、自己管理、効率重視、結果重視の3つの視点。これらは会社から、まして政府に言われて「改革」するようなことではない。どうして日本人はいまだに形式主義に、しかもお上からのお達しに弱いのだろう。どうして自分でものごとの本質を見抜き、判断し、行動しようとしないのか。本当の競争力は個々の人間の経験力、判断力にこそある。福澤諭吉先生もそれに誰より早く気がついた日本人の1人だ。

 少し掘り下げてみたい。まず自己管理とは、体調(健康)管理、精神面の自己管理が基本であり、ここから仕事のタスク管理、諸々のマネジメント(人、もの、金、時間)となる。仕事とは実にストレスがたまるものであり、うまくコントロールしていかないと自己の心身までだめにしてしまう。

 効率管理とは限られた人生の時間をどのように割り振るかというもので、長時間やったから、あるいは短時間でごまかしたら偉いわけでもない。どこにどのぐらいの時間を割くか、その覚悟を決める、自己とのそして時間との闘いだ。

 そして結果重視とは、まさにビジネス界の常識であり、何時間かけようが結果がだめなら、基本アウトである。それが雇用条件だったなら即首になっても文句も言えない。

 これらのことを総合的にバランスして都度、残業するかしないかを自己決断する。それが「働く」ということだと理解している。もちろん世の中にはいろいろな人がいるわけであって、楽してたくさん稼ぎたい人も、夢の実現のために短期的にお金やら俗世の名誉を捨てる人などもいるだろう。いずれも本人が納得してそう決断することが大事で、他人から働き方を押し付けられるなど、もってのほかである。結果は全部自分にかえってくる。

 仕事と情熱、これは切ってもきれないものだ。人生の大半の時間は働くことと寝ることに費やされる。寝る時間の自己コントロールはなかなか難しい。となれば、起きている時間の大半を占める仕事の時間をどう過ごすのかはほぼ、人生どう生きるのかと等しい。「お金のため」とか「生きるため仕方ない」と割り切るより、「何かで役に立ちたい」「貢献したい」「認められたい」などは素直ないい動機で、そこに残業云々の議論はまったくナンセンスなのだと、若いオランダ人たちを見ていて実感した。

荒木篤実●パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。マー ケティングとITビジネス のスペシャリスト。ITを駆使し、日本含む世界の地場産業活性化を目指す一実業家。

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