米国や英国でブレイクする単身旅行の実態とは
2019.04.08 08:00

単身旅行(Solo travel)市場は拡大を続けており、米国の複数の19年旅行トレンド予測でも重要テーマとして掲げている。今や、単身旅行はブームであるという声もあるようだ。
昨年末に英国旅行業協会(ABTA)が18年8月までの1年間の実態をまとめたABTA旅行動向年次調査が発表され、この分野が大きく取り上げられた。英国の単身で休暇をとる旅行者は近年顕著に増え、旅行者総数に占める比率は11年6%、17年12%、18年15%である。年代別では35~44歳で前年の5%から16%に伸長している。
単身旅行が多いのは、米国、英国とも人口構成上単身者比率が高くなったというのがこれまでの通説であった。今回の調査で単身旅行を選択した理由として、①「自分の好きな旅行をしたい」76%(男性は80%)、②「小休止の時間を持ちたい」63%(女性は69%)、③「新しい旅行先へ行きたい」37%という結果になった。
ABTA会長は、同行者に気がねなく、好きな目的地、日程で、思い通りの行動ができることが、単身旅行が増えている最大の理由と述べた。たまたま単身で同行者がいないからでなく、1人での旅行を楽しもうとする旅行者の自己実現の主張であると解釈している。無論、背景にはLCCや民泊普及による旅行費低減、進化したスマートフォンやソーシャルメディアにより個人旅行者の行動が飛躍的に容易になった環境もある。
ABTA会長は単身旅行を支える業界の努力も指摘する。単身旅行者の多くは旅行を通じて、新しい友人を得るために他の旅行者や土地の住民と接触、交流したいという強い希望を持っているといわれる。旅行会社が企画するグループ旅行は、こうした機会を多く提供してくれる意味で、理想的な単身旅行者向け商品といえる。ガーディアン紙は単身旅行が取り扱いの50%を占める平均10人の小グループでのアドベンチャーツアーを得意とするイントレピッドトラベルや、1人参加の追加徴収をしないエクスプロアなどを紹介している。
ABTA調査を報じたテレグラフ紙は、単身旅行の隠れた落とし穴は、カップルに比べ旅行費が割高であることで、今後増大が予想されるこの市場に対応する業界の基本姿勢の変革を求めている。
シングルキャビンにソロラウンジ
長年の課題であるカップルが基本のクルーズの1人船室については、ウェブサイトのクルーズクリティックによれば、10年に新造船にシングルキャビンを導入したノルウェージャンクルーズが先駆者で、単身船客の交流の場のソロラウンジ設営も評価されている。他社も努力しているが、船室の狭さ、眺望、そして料金等いまだ旅行者の満足は得られていない状況のようだ。
単身旅行者の好む目的地については、18年のアゴダの調査によれば、ソロツーリストの好む目的地はバンコク、ロンドン、シドニーなど大都市が多く、アジア、欧米旅行者がともに東京を上位に掲げているのが興味深い。
欧州全域の市場については、オランダ外務省に属する調査機関CBIのレポートがあるが、同様に現在ブームと伝えている。単身旅行市場は、もはやニッチマーケットとはいえないのではないか。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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