旅行者は迷惑か、英国エディンバラの課税問題
2019.03.18 08:00
英フィナンシャル・タイムズによると、エディンバラ議会は旅行者税を課税する英国で最初の都市になるようだ。議会による立法措置が終わって発効するが、エディンバラのすべての有料宿泊施設を利用する旅行者は、最初の週に1泊2ポンドが徴収されることになる。エディンバラの動きはベニスの日帰り旅行者に対する上陸税計画に倣ったものだ。イタリアの観光大臣は「われわれは旅行者嫌いの国になりたいのか」と嘆いたのだが。
旅行者税は新しいものではない。世界の多数の国にホテル客室税がある。一昨年の大ロンドン庁報告によると、旅行者税はエディンバラのような定額から宿泊料の一定率、ホテルのクラスに応じた一定額などいろいろだ。旅行者税の支持者は通常、2つの論拠を挙げるが、1つはベニスのように旅行者があまりに多すぎ、公共施設を利用するので、その費用を分担すべきというもの。確かに旅行者は公園、ゴミ箱、無料の博物館、警官の仕事などすべて地域住民の税金によるサービスを利用する。
もう1つの課税賛成論には、外からの訪問者は迷惑だという認識がある。彼らは歩道や列車の入り口の邪魔になり、目的もなく動き回り、ゴミを散らし回る。ベニスは旅行者が残したゴミの全部を片付けるのに旅行者税が必要だという。
その土地が訪問者で過度に混雑するレベルまで、街や国は何人まで受け入れ可能だろうか。国際旅行者数は年々急速に拡大している。世界観光機関(UNWTO)は10年から20年までの国際旅行者が3.8%増えると予想する。17年の国際旅行者13億人は前年の7%増加だった。17年にはどこよりも多い51%が欧州を訪れた。次いでアジア・パシフィック24%、米大陸16%、アフリカ5%、中東はわずか4%だ。国別ではフランス、スペイン、米国が3大デスティネーションで、英国は7位と中国、イタリア、メキシコの後塵を拝する。しかしスキー場もビーチも少なく、天候も不順な国としては健闘している。
金持ち旅行者の比率が増えれば
旅行者が十分ある国の国民は、本当に来訪者が必要なアフリカや中東の支援を始めるべきと考えるかもしれない。豊かな国が旅行者が来なくても、あるいは減ってもやっていけるとするのは自己満足だ。フランスは16年に前年のテロ事件で旅行者が減少した。外国からの旅行者は2.2%しか減らなかったが経済的損失は大きかった。パリ観光局は16年が悪夢だったとし、「旅行者は単にホテルやレストランの雇用を支えるだけでなく、飲食、食器サプライヤー、ベッドやリネンのメーカーの雇用を生み出す」という。劇場やタクシー運転手は旅行者の来訪が止まればすぐ影響を受ける。
旅行者数の緩やかな減少と観光収入の増加を望む国々には経済と環境の両面の議論がある。より多く消費する訪問者はより少ない消費の訪問者より地域経済に価値がある。米国は外国観光客数で3位だが、観光収入ではフランスやスペインの3倍以上と大きい。その点でエディンバラの均一課税は賢明だ。逆累進税となる。高消費の旅行者は2ポンド程度で旅行を延期しないが、バックパッカーは費用が高過ぎると旅行を止めるかもしれない。不公平かもしれないが、金持ち旅行者の割合が増えればエディンバラにはよいことだ。金持ちも来訪を止めれば、提案はギャンブルになるが。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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