HIS、旗艦店で脱プロダクトアウト 移転で機能見直し 有田本部長「気づきの場に」

2024.07.08 00:00

入り口正面に設けたハイカウンターのトーキングエリア。1階フロアのみでスタッフ35人を配置

 エイチ・アイ・エス(HIS)は6月28日、旗艦店の新宿本社営業所を刷新し、場所を新宿南口から西口に移して「トラベルワンダーランド新宿」として営業を開始した。1993年に開業した旧店舗は日本最大級の旅行店舗として当時話題を呼んだが、新店舗では予約受け付けを軸にした従来の機能から転換。コミュニケーションを重視し、旅の気づきを引き出す場とする。

 2フロアで構成し、上階に目的が明確な専門店を配する一方、1階はイベントや会話を通じて旅のイメージを広げるエリアに重きを置いた。直線に接客カウンターがずらり並んでいた旧店舗から大幅な刷新となる。入り口横には、スタッフが薦める100の体験をプラカードにして設置。スタンプを使って旅の情景を表現するツールもあり、カウンターに持参して会話しながら旅を形づくる仕掛けを施した。

 狙いについて、有田浩三執行役員個人旅行営業本部長は「旅行の提案がプロダクトアウトになりすぎている」と課題を指摘する。目的地と価格の訴求が先行しては、消費者が真に求めることにたどり着けない可能性がある。海外旅行需要が回復軌道に乗り切らないなか、潜在的な意識や思いから旅を形にし、市場を活性化させたい考え。

 旧店舗で行っていた来店予約も並行して継続するが、「お客さま寄りに見えて、実は効率化を求める企業寄りの発想」と断じる。毎週末にイベントを開催して興味を引き付け、ふらっと立ち寄れる場を目指す。

 開業初年度の売上高目標は旧店舗の1.5倍。「本当はこういう旅がしたかったんだという気づきをこの店から発信できたら、旅行のあり方が変わっていくのではないか」と期待を寄せている。