地域の観光と商工会議所 現状と課題、これからへの提言

2020.03.16 00:00

ほしいも魅力発信プロジェクトが観光振興大賞に
(C)iStock.com/chengyuzheng

全国各地の商工会議所の観光振興に関する調査結果がまとめられ、インバウンド拡大への取り組みが着実に進んでいることが報告された。しかし、訪日客の誘客が必ずしも地域における消費拡大につながっていない実態やオーバーツーリズム問題に悩む地域の存在もデータに表れた。

 日本商工会議所地域振興部は、各商工会議所の観光振興の実態に関する調査を毎年実施している。調査は「地域および商工会議所における観光振興の現状に関する調査結果(2019年度)」としてまとめられ、2月の第16回全国商工会議所観光振興大会(金沢市)に合わせて公表された。

 調査は全国515商工会議所を対象に昨年10月30日~11月28日に実施され、443商工会議所が回答。回答率は86.0%だった。

 調査によると、このところ年々強化されてきたインバウンド誘客の取り組みは継続されている。インバウンド拡大に「積極的に取り組んでいる」と「まあまあ取り組んでいる」と回答した商工会議所は合計232カ所で全体の53.6%。19年度も5割を超える商工会議所がインバウンドを意識した取り組みを行っていた。18年度調査からは0.5ポイント増で、ほぼ横ばいの結果だ。ただし「ほとんど取り組んでいない」も19.2%あることから、地域によっては国内観光客の誘致で手いっぱいで、インバウンドにまで手が回らない現状も垣間見える。

 インバウンドの取り組み内容を具体的に見ていくと、ナイトタイム観光の充実や体験型プログラムの造成などが目立ち、コト消費への取り組みが始まっているようだ。たとえば、栃木県の足利商工会議所では、「足利夏まつり」事業として、足利花火大会の前夜祭を行い2日間にわたって市内の北仲通りを歩行者天国とし、「夜店まつり」を開催。さらに足利織姫神社ではナイトウエディングや演奏会も実施。これまで手薄だったナイトタイムの観光需要の喚起に取り組んだ。

 今回、インバウンドに取り組む商工会議所が5割を超えたのに対し、インバウンドの増加の手応えを感じる商工会議所は4割強にとどまった。調査では地域における過去1年間のインバウンドの増減を尋ねているが、「増えている」と回答した商工会議所は45.5%(197カ所)。一方、「減少している」との回答は5.3%のみ。7割を超える商工会議所が「増加」または「変化なし」(横ばい)と答えている。

 各地を訪れるインバウンドの特徴を尋ねたところ、全体的に中国、台湾、東南アジアからの旅行者が依然多くを占めている。これらの国・地域からの旅行者が急速に個人客化していることを踏まえると、受け入れ地域側も多様なニーズへの対応力を早急に向上させる必要がある。

消費額伸び悩みと観光公害

 商工会議所がインバウンド誘致に抱える悩みもさまざまだ。インバウンドに取り組む上での課題を尋ねたところ(複数回答)、「地域情報が海外に届けられていない」「誘客を推進する人材がいない」「外国人旅行者が少ないため機運が盛り上がらない」「二次交通が不足、整備されていない」との回答がそれぞれ4割前後あった。自助努力すべき内容でもあるが、一商工会議所で解決できない課題もあり、日本政府観光局(JNTO)や観光庁の支援、あるいは支援を引き出す商工会議所側の工夫が求められる。

 インバウンド拡大の取り組みの効果や成果を尋ねたところ、インバウンド客数の伸びに対する手応えより、インバウンド消費額の増加に対する手応えが下回る。「来訪するインバウンドが増えた」との回答は25.4%(110カ所)だったのに対し、「インバウンドの消費額が増えた」は8.5%(37カ所)。「商店街の活性化につながった」も3.2%(14カ所)と少数派だ。この結果を見る限り、今後はインバウンド客の増加をインバウンド消費の拡大につなげる取り組みが、より一層求められることになる。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年3月16日号で】

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