世界水準のDMOたれ、観光地経営組織のあり方とは

2019.02.11 08:00

果たして世界水準のDMOの要件とは (C)iStock.com/Robert Daly

観光の経済効果を全国各地に波及させるために欠かせないDMO(観光地経営組織)。政府は20年までに世界水準のDMOを全国で100組織形成する目標を掲げ、DMO育成や活動支援に力を入れる。しかし人材や組織マネジメント、財源など乗り越えるべき課題も少なくない。

 訪日外国人旅行者数の伸びに拍車がかかった10年代以降、DMO(Destination Management/Marketing Organization)の存在がクローズアップされるようになり、観光庁は15年12月から日本版DMO登録制度の運用を開始。観光地域づくりの舵取り役を担うDMOの育成に向けた取り組みを本格化した。


 16年には日本の観光施策を方向付ける「明日の日本を支える観光ビジョン」の中で、「20年までに世界水準のDMOを全国で100組織形成する」との目標が掲げられ、DMO育成が明文化された。また、登録制度の創設に伴い、登録の5要件が示されることで、日本版DMOの定義が固まった。

 その5要件が、(1)DMOを中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意の形成、(2)データの継続的な収集、戦略の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立、3関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組みづくり、プロモーションの実施、4法人格の取得、責任者の明確化、データ収集・分析等の専門人材の確保、5安定的な運営資金の確保 ―である。

 日本版DMO登録制度は、DMO候補法人の登録を経て、17年11月からはいよいよDMO法人の登録がスタート。登録制度運用開始以来、約3年がたち、日本版DMO法人102、候補法人121の合計223組織が登録されている。

 日本版DMO法人102の内訳は、広域連携DMOが8、地域連携DMO54、地域DMO40で、地域連携DMOが最も多いが、候補法人と合わせると地域連携DMOが96、 地 域DMOが117で地 域DMOが最も多くなる。

 北海道、東北、中央日本、関西、瀬戸内、山陰、九州、沖縄を対象区域とする8つの広域連携DMOにより、すでに38道府県がカバーされているが、現在、候補法人である関東観光広域連携事業推進協議会と四国ツーリズム創造機構がDMO登録となれば、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、高知が対象区域に加わり、全国47都道府県すべてが広域連携DMOによってカバーされることになる。

 法人形態を見ると、全体の半分以上の64組織が一般社団法人で、観光協会主体のDMOが目立つ。このほかは、公社10、公共財団8、株式会社8、一般財団法人6、特定非営利法人5、協同組合1となっている。たとえば、地域連携DMOの赤城自然塾は特定非営利法人で、自動車装備品メーカーのサンデンホールディングスが環境共存型工場として開発したサンデンフォレストなど、赤城山麓の自然を生かした環境教育プログラムの策定推進やエコツーリズムの推進を図るDMOで、サンデンホールディングスの元副会長が代表を務める。

 また、地域における観光振興のパイオニアとして知られる地域連携DMOの南信州観光公社の法人形態は株式会社で、収入全体の9割以上を収益事業で上げ、補助金等の割合は7%に満たない。

世界から旅行者を呼べる水準

 このように登録制度上のDMO数は着実に増えているが、もちろんDMOの数を増やすことそのものが目的ではなく、あくまでも観光振興が狙いである。日本版DMOの登録5要件は必要条件であって、世界水準のDMOにふさわしい成果を上げ得る組織としての十分条件ではない。観光庁も「観光地経営にかかるノウハウや人材の不足など、課題を抱えている地域も少なくない」ことを認めている。


 そこで観光庁は、全国各地のDMOの取り組みの実態を踏まえ、今後、持続可能な観光立国の実現という観点から求められる「世界水準のDMO」のあり方を明確にするため、有識者からなる「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」を設置し、昨年11月に第1回を開催した。3月13日に予定している第7回までの議論を踏まえ、年度内に中間取りまとめを行う考えだ。]

【続きは週刊トラベルジャーナル19年2月11日号で】

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