DMO連携の時代 地域発展の新たな手法

2024.06.24 00:00

(C)iStock.com/wildpixel

複数のDMOが地域を越えて手を携え、観光客誘致や周遊コース開発に乗り出す例が増えている。地域間の競い合いだけでなく地域連携型の観光マーケティングへ。新たな観光振興のあり方が注目される。

 奈良県と大阪観光局は5月14日、協定を締結し、訪日外国人旅行者を中心とする交流人口の拡大を連携して行っていくと発表した。奈良県が観光分野において、都道府県レベルで連携協定を結ぶのはこれが初めてのことだ。

 都市型観光資源が豊富で集客力の高い大阪と、文化・歴史資産や自然環境に恵まれた奈良は異なる特徴を持つ。来年開催される大阪・関西万博をきっかけに、相乗効果を最大限に引き出し合いながら魅力的な観光地域づくりを目指すという。

 奈良と大阪の連携に限らず、このところ都道府県やDMOがエリアを越えて連携協定を結ぶケースが目立つ。22年には京都市観光協会と広島県観光連盟がコロナ禍後の観光産業発展を見据えた「ひろし・みやこ同盟」を結成。23年には、5月に関西以西の4つのDMOが連携協定を締結し、広域周遊観光エリア「Greater WEST JAPAN(グレーターウエストジャパン)」の実現に取り組んでいる。同6月には、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)と長野県観光機構がDMO連携強化と観光産業の振興に関する連携協定を締結した。

地域間交流を積極化する沖縄

 特に、他の地域それも地理的に近くなく特徴もまったく異なる地域との連携に積極的な姿勢を示しているのがOCVBだ。これまで海外のDMOとは連携協定を締結してきたが、国内DMOとの協定は長野県が初めて。締結の記者会見で下地芳郎会長は、マーケットに目を向けるだけでなく、今後は「地域間の交流を進めていくことが重要だと考えている」と説明した。

 沖縄の観光にとって、地域間交流は国内旅行需要だけでなく訪日旅行需要を取り込むうえでも重要だ。23年に沖縄を訪れた外国人旅行者約100万人のうち2割が国内航空路線を利用し、国内航空路線の拡充はインバウンドにも重要項目となっている。国内各地との交流活性化によって航空路線のパイプが太くなれば、訪日外国人を呼び込む環境の整備・強化に直結するからだ。

 航空路線強化としてOCVBが長野県との連携で力を入れているのが、将来的な定期便就航を目指したチャーター便の促進だ。もともと沖縄・長野間のチャーター便の相性は良い。日本で最も標高の高い場所にある松本空港は運航に季節的な制約があるが、長野を含む甲信越地方から沖縄への旅行需要が高まる10~11月はチャーターを運航しやすい季節でもある。沖縄から紅葉観賞を求めて長野県を目指す旅行需要と、冬の足音が近づく長野から常夏の沖縄への旅行需要が高まる季節に当たり、双方向のチャーターを販売しやすい。

 協定締結後は商談会や相互で歓迎式、交流会の開催など、チャーター活性化に積極的に取り組んでいる。同時に、研修旅行を誘致するために教育機関への参加を共同で呼びかけたり、現在は両県の観光情報サイトで互いの観光情報を発信する準備を進めているところだ。

 OCVBにとって国内DMOとの連携は長野県が初とはいえ、協定を結んではいないものの、観光に係る分野で幅広く協力してきたのが北海道である。ベースになっているのは「どさんこしまんちゅプロジェクト」だ。もともと沖縄県産業振興公社と北海道科学技術総合振興センターが14年に経済連携協定を締結するなど、北と南の交流関係があった。そのうえで18年に双方の多業種の企業が参画し、「北海道と沖縄から日本を元気にしよう!」をビジョンに掲げた民間ベースの地域創生プロジェクトとして立ち上がった。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年6月24日号で】

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