旅行事業者の趨勢と論点 地域限定・手配業漸増で過去最高に

2023.07.03 08:00

(C)iStock.com/ivanmateev

コロナ禍で漸減傾向にあった旅行事業者数が3年ぶりに増加に転じた。減少から増加への反転を後押ししたのが旅行サービス手配業や地域限定旅行業の増加だ。一方で第1種・第3種の旅行業や旅行業者代理業は減少が止まらない。旅行業登録の最新状況からは旅行事業者の趨勢の変化がうかがえる。

 観光庁によると、23年4月1日現在の旅行事業者(旅行業者・旅行業者代理業者・旅行サービス手配業者)の総数は全国で1万2090社。昨年4月の1万1791社より299社増え、2.5%の増加となった。

 総数が前年を上回ったのはコロナ禍が始まってからはこれが初めてだ。前年同月を最後に上回ったのは、コロナ禍の影響がまだ登録に反映されていない20年4月の事業者総数で、前年を3.4%上回った。しかしそれ以降は21年、22年と減少傾向が2年続いた。今年は3年ぶりに増加傾向を取り戻したことになる。さらに1万2000社を超えた事業者総数は、20年の1万1948社を抜いて過去最多の登録数となった。

 コロナ禍が沈静化し、昨年10月に国の水際対策が大幅に緩和されるなど国内外を問わず人の移動が再び勢いを増す兆しが見られたことが旅行事業者の増加傾向に反映されているであろうことは想像に難くない。その後も水際対策の完全撤廃や、新型コロナの感染症法上の扱いが2類から5類に引き下げられるなど、旅行事業を取り巻く環境は好転しており今後も事業者数の増加が予想される。

 総数は増加に転じたものの、登録業種別に見ると、各登録区分で傾向は異なる。第1種、第3種、旅行業者代理業は減少傾向が止まらない。

 第1種は19年から一貫して減少しており、20年4月と今年4月を比べると減少幅は59社(8.6%)となっている。19年から減り続けている第3種も20年4月から549社(9.6%)も減少している。10年以上連続減少となっている旅行業者代理業は20年4月から109社(17.6%)もの大幅減だ。第3種旅行業や旅行業者代理業の縮小は、旅行商品の販売が実店舗からオンライン販売に移行するといった商品流通の変化が大きく影響していると見られる。流通の変化は今後も加速し、第3種旅行業や旅行業者代理業を取り巻く環境は厳しい状況が続くだろう。

 反対に登録社数が増加し事業者総数の増加を支えているのが旅行サービス手配業と地域限定旅行業だ。国内外の旅行業者からの依頼で国内地上手配を行う旅行サービス手配業は昨年4月より332社(18.4%)の増加で登録事業者数は初めて2000社を超えた。20年4月と比べると増加幅は38.6%にもなり実数では594社の増加だ。コロナ禍後の復活が見込まれるインバウンド需要の受け入れに不可欠な旅行サービス手配業には今後も参入が続くと見られ、事業者数の増加が予想される。

 着地型旅行商品を扱う地域限定旅行業者は623社で昨年4月より89社(16.7%)の増加だ。19年以降毎年約70~100社ペースで急速に登録数が増えており、20年4月と比べ増加幅は68.8%、実数で254社に達する。コロナ禍以前から旅ナカコンテンツへの関心が高まっていた上に、コロナ禍でマイクロツーリズムなど狭い地域を限定した旅行需要の取り込みも脚光を浴びるようになった。そうした状況の変化が地域限定旅行業者の増加を促している。

 旅行サービス手配業の事業者数はどう変化してきたのか。インバウンドビジネスの最大市場である東京都を例に見てみると、インバウンド需要が消滅したコロナ下と、コロナ禍が沈静化してきた今年とで激変していることが分かる。

コロナ禍を抜け状況は変化

 東京都によると、旅行サービス手配業の登録開始以降、20年4月までに241社が登録。コロナ下の21年には35社の登録にとどまったが、22年は66社に増加している。また今年は1~4月にすでに39社が登録。単純計算すれば今年は120社程度の新規登録があっても不思議はない計算だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年7月3日号で】

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