アンテナショップのこれから どこへ向かう自治体の首都圏機能

2022.11.14 00:00

(C)iStock.com/VTT Studio

地方自治体が東京を中心に展開するアンテナショップが見直しを迫られている。コロナ禍で撤退を余儀なくされたり、立地の変更や機能のリニューアルにより出直しを図るショップも増えている。アンテナショップの役割はこれからどう変化していくのか。

 地方自治体のアンテナショップが集中する有楽町の東京交通会館にあった兵庫わくわく館(兵庫県)が今年3月に閉店した。これまで県内企業の経営者らで構成する兵庫県特産物発信協会が県の補助金を得て運営してきたが、11年の歴史に幕を下ろした。15年にはサービス・オブ・ザ・イヤーのアンテナショップ部門賞を受賞するなど人気店として多くの来店客で賑わい、19年には手狭だった店舗面積(約7坪)を3倍以上に拡大。同年の観光案内サイトによる東京のアンテナショップ人気ランキング調査では、ひろしまブランドショップTAU(広島県)に次ぐ2位にランクされた。

 この人気をてこにラグビーワールドカップ2019、東京五輪2020、ワールドマスターズゲームズ2021関西と続くビッグイベントの開催も追い風として、神戸スイーツや灘・播磨の清酒など兵庫の名産品の販売を伸ばし、世界中にHYOGOブランドを発信するはずだった。

 ところがコロナ禍により店頭の売り上げが激減。店舗拡大策が裏目に出てしまうと同時にアンテナショップに対する県の見方も変化した。県は「首都圏のアンテナショップに期待する役割は、県産品を広く知ってもらうというものから、徐々に観光誘客や地域イメージの向上などを担う総合的なプロモーション拠点へと変化してきている」と判断。県政改革方針の一環で兵庫わくわく館の閉館を決め、21年度に約2400万円だった補助金を22年度予算では打ち切ることになった。代わりに県は、六本木の日本産品のセレクトショップTHE COVER NIPPONなど首都圏3店舗で工芸品や食品の販売を行い、7月の販売開始からの2カ月間の実績として、兵庫わくわく館では1人当たり約1000円だった客単価が3倍の3000円になったと議会に報告している。

 コロナはアンテナショップにも深刻な影響を及ぼした。地域活性化の取り組みについて支援などを行う地域活性化センターの「2021年度自治体アンテナショップ実態調査報告」によれば、調査対象62店舗のうち年間入館者数が100万人に達した店舗は19年度は3店舗あったが、20年度は北海道どさんこプラザ1店舗になった。同店も19年度は入館者数が200万人を超えていたが、20年度は150万人に届かず大幅減となった。

 年間売り上げも落ち込んだ。19年度の年間総売上額は、1億円以上が全体の60%の37店舗だったが、20年度は47%の29店舗に減少。19年度に年間10億円以上を売り上げていた北海道どさんこプラザも20年度は10億円を下回った。

減少に転じる都内の出店数

 入館者数や総売上額の減少を招いたのは、コロナ禍による休業や営業時間の短縮だ。20年度に休業(一部期間)したのは全体の74%の46店舗で、営業時間短縮を行ったのも71%の44店舗に達している。また飲食施設を休業するなど部分休業したケースも39%の24店舗あった。

 昨年8月に日本橋エリアの再開発事業に伴い日本橋から新橋へ移転リニューアルした奈良まほろば館(奈良県)は当初、平日は1日800人程度、週末は1日1000人程度が来館。オープンから12月末までの売上額も約5200万円と順調だったが、東京都にまん延防止等重点措置が出された今年1月に入り来館者数は2~3割減少したという。

 コロナ禍の打撃を受けたアンテナショップの中には兵庫県と同様に撤退したケースもあり、北海道・美瑛町の「丘のまち美瑛」は今年1月末で閉店。兵庫県豊岡市の「コウノトリの恵み 豊岡」はコロナ禍前にすでに「情報発信拠点としての一定の役割を果たし、アンテナショップを巡る環境が大きく変化した」ことなどから閉店方針を決めていたこともあり、20年5月末に閉店している。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年11月14日号で】

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