テレビと地域振興 BS開局続々で誘客に新局面

2022.05.30 00:00

(C)iStock.com/flashfilm

旅番組や地域紹介番組をメインとするBS放送局の新規参入が相次いでいる。BSJapanextとBSよしもとはいずれも地域創生を目的に開局。テレビ通販会社も旅や地域をコンテンツとして強化しており、大手メディアの参入で地域振興は新たな局面を迎えそうだ。

 3月21日、新しい衛星放送テレビ局としてBSよしもとが開局した。吉本興業が19年から開局準備を進めてきたもので、コンセプトに地方創生を掲げての開局だ。その6日後の3月27日には、テレビ通販事業を展開するジャパネットホールディングスのグループ会社、ジャパネットブロードキャスティングも新たにBSJapanextを開局。同局も地方創生に特化した番組を放送の中心に据える方針だ。両局はいずれも、既存事業者が使用していた周波数帯が自主返納されたことを受けて総務省が19年に行った公募をきっかけに新規参入を決断。衛星基幹放送局として認可を受け、21年度末の放送開始を目指して準備を進めていた。

 BSよしもとが地方創生を掲げる背景には、吉本興業グループが11年から進めてきた「あなたの街に住みますプロジェクト」がある。グループに所属する芸人がエリア担当社員と共に全国47都道府県に居住。地域に拠点を置き、笑いの力で地域活性化に寄与することを目的とした取り組みだ。吉本興業は「12年目に入った同プロジェクトによって、各地域の人々や自治体、企業・団体等とネットワークを築くことができた。BSよしもとでは、こうした活動をコンテンツ化していきたい」とする。

 番組は地域の魅力やニュースを生放送で伝える内容が中心で、特に昼間の時間帯はローカルニュース・文化・人物を紹介する情報番組がメイン。「行く・見る・味わう・楽しいニッポン」をキャッチフレーズとする地域情報バラエティー「チーキーズ a Go Go!」を月~金曜の13時から4時間にわたって生放送する。番組作りには住みます芸人に加え、各地で活動するユーチューバーや住民などにも参画してもらう。

 吉本興業は情報発信だけでなく、番組を出発点とした事業の立ち上げにも取り組んでいく考えだ。住みますプロジェクトを通じて規模は小さくとも事業の芽となりそうなアイデアがすでに数百あるという。こうした事業の芽を、地元の企業や金融機関との関係や番組の力を利用して育て、「一番組一起業を目指したい」という。

 BSJapanextは月~金曜19~21時のゴールデンタイムに旅番組を中心とする地域創生に特化したプログラムを放送している。全国各地の魅力的なモノやコト、グルメなどを取り上げる番組の対象地域は観光地だけではなく、あまりポピュラーではない地域も積極的に取り上げていく方針だ。

 同社の強みは、通販番組の制作などを通じてテレビ放送に必要なノウハウや人材を確保していることだが、開局に際して社員約75人を採用し、人材を補強した。物販だけでなくクルーズ商品の実績もある。90分のクルーズ番組を放送した後に旅行商品を販売するスタイルで、クルーズ販売を伸ばした実績は旅行業界でも注目された。BSJapanextはこうしたノウハウを駆使し、観光関連商品の販売や各地への誘客を支援し、地方創生に貢献したい考えだ。

 もう1つの特徴は番組と連動したアプリ。視聴者が感想を伝えるコメント投稿機能や商品を最短2タップで購入できる機能を備えた。もともとジャパネットのショッピングアプリを基盤に刷新したもので、ダウンロード数は刷新前を含めすでに約55万。多くの視聴者が利用することになりそうだ。地域の居住者でないとわからない地域情報なども収集が可能で、「そうした情報を基に旅番組の候補地や内容を決めるといった番組作りも可能になる」(ジャパネットホールディングス)ため、全く新しい旅番組が生まれることも期待される。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年5月30日号で】

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