旅ガチャヒットの理由 時代の気分と企画のヒント
2022.03.28 00:00

ピーチ・アビエーションのカプセル型自販機「旅くじ」がヒットを飛ばしている。これに続けとばかりに宿泊やバスツアーでも同じ発想の商品が販売され、地域活性化に生かそうと「街ガチャ」なる企画も登場した。行き先や中身がわからない“旅ガチャ”は何がヒットにつながったのか。
ピーチ・アビエーションは昨年8月、大阪・心斎橋パルコ内でガチャガチャ式のカプセル型自販機による「旅くじ」の販売を開始した。行き先を選べない旅を楽しむ、ちょっとお得な購入スタイルがSNSなどで話題となり、約2カ月で3000個以上を販売する大ヒットとなった。この人気を受けて10月以降、東京、名古屋、福岡、札幌に販売拠点を順次拡大。機内販売にも乗り出し、東京(成田)着11路線、大阪(関空)着13路線で順次スタートした。
開始から4カ月でTikTokでの動画再生回数は1100万回以上、累計販売個数は1万個超え。3月時点の累計販売個数は1万5000個で、オミクロン株の感染拡大などもあり販売ペースは落ちたものの、根強い人気を保っている。
さらにこの3月には就航10周年を記念し、あきんどスシローとコラボレーション。ピーチ路線の拠点空港(新千歳・成田・中部・関西・福岡)に近い商圏にある約320店舗のスシローで3月7日から末日まで、期間限定で旅くじの販売を行っている。これに先立つ3月1日には東京のスシロー八重洲地下街店でもカプセル型自販機を設置し、旅くじを先行販売した。
旅くじのヒットを追うように、観光業界ではガチャの活用が広がっている。ホテル分野では東武鉄道が東武ホテルグループの宿泊券やレストラン食事券が当たる「ホテルガチャ」を販売すると、年末から年始にかけてホテルニューオータニ東京やプリンスホテル&リゾーツが相次ぎガチャ系の企画を投入した。東武鉄道では販売場所の東京ソラマチに早朝から大行列ができ整理券が発行される人気ぶりで、初日の12月16日に限定500個は即日完売。「いままで知らなかった東武ホテルを知ることができて良かったとの購入客の声が聞けるなど、非常に大きな手応えを感じることができた」(広報部)という。
旅行会社では読売旅行がいち早く動いた。昨年12月、購入時点で行き先がわからない代わりに通常料金の半額程度のお得な添乗員付き日帰りバスツアー「行き当たりばっ旅」を発売した。予約はオンライン限定で、自社ホームページなどでゲリラ的に告知し、不定期に販売。いつ販売するかわからない神出鬼没の企画とした。テスト販売の初回は12月10日から12日まで3出発日の都内出発商品を販売し、38人が参加。第2回は1月2日から10日まで9出発日の東京・千葉・埼玉・群馬・茨城を出発する商品を販売し、98人が参加した。いずれの回も、用意した座席数をほぼ完売したことになる。
ホテルや旅行会社より早く動いていたのが船橋市観光協会だ。昨年10月に市内21カ所で「街ガチャin船橋」を開始。地元在住のイラストレーターが描き下ろした船橋の名所など10カ所のイラストをアクリルキーホルダーにして1回300円で販売したもので、カプセルトイで街を盛り上げるプロジェクトの一環として実施した。
目的は安さよりワクワク感
ピーチの旅くじの場合、仕組みはこうだ。カプセルにポイント交換コードと行き先を記載した印刷物を入れ、1回5000円で販売。購入者はピーチのウェブサイトで交換コードを入力し、指定された路線の航空券購入に充当できるポイントと交換する。交換されるポイントは6000円相当分以上で、運が良ければ1万円分のポイントと交換できることもある。
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