プラ規制とアメニティ 対応迫られる宿泊施設

2022.03.07 00:00

(C)iStock.com/chuck

ホテルや旅館は、これまで宿泊客に提供してきたアメニティ類の見直しを迫られている。脱プラスチックを目指す新法が4月1日から施行されるからだ。すべての宿泊施設が規制対象ではないものの、新法施行を機に脱プラ機運は確実に高まる。社会的責任を果たさないと見なされれば市場からの退場を宣告されかねない。

 最近はホテルや旅館を利用する際、「客室、大浴場にはアメニティを用意しておりません。お客さまご自身でお持ちいただくか、フロントよりお持ちいただくようお願い申し上げます」といった案内を目にすることがある。案内書きの冒頭には「プラスチック資源循環促進法」という見慣れぬ法律名が記され、その対策のためと説明している。

 プラスチック資源循環促進法の正式名称は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」で、昨年6月に公布され今年4月1日から施行となる新しい法律だ。プラスチック資源循環促進法(プラ新法)は、プラ製品の設計・製造段階から使用、廃棄処理に至るまでのプロセスにかかるあらゆる事業者にプラスチック資源循環の取り組みを働きかける内容。その取り組みはリデュース(削減)、リサイクル(再利用)、リユース(繰り返し利用)の3RにRenewable(リニューアブル)を加えた「3R+Renewable」が基本原則だ。

 プラごみが出ることを前提に廃棄量の削減を図る3Rにとどまらないのが特徴で、ごみが出る前提を否定する考え方をリニューアブルとして付け加えた。リニューアブルとはプラ製品を使用後も廃棄物にせず、製品あるいは資源としての価値を可能な限り維持し活用し続ける考え方で、プラ新法の重要なポイントとなる。その意味では環境対策で先行する欧州から広まったサーキュラーエコノミー(循環型経済)実現に資することを念頭に構成される。

 プラ新法が求めるのは「プラスチック製品の設計・製造」「販売・提供」「排出・回収・リサイクル」の各段階における取り組みだ。このうち宿泊産業に大きくかかわるのが販売・提供段階の取り組み。プラ新法第4章「特定プラスチック使用製品の合理化」がこれに当たる。

 特定プラ製品の種類や多量提供事業者として規制対象となる具体的な内容は政令で定められる。特定プラ製品に該当するのは12品目。宿泊業ではヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシ、フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、ストローが該当し、クリーニングサービスを行っていれば衣類用ハンガーや衣類用カバーも該当する。

 規制対象となるのは特定プラ製品を前年度5トン以上提供した事業者。罰則や罰金はないが、法律の趣旨に従わなければ必要な措置を取るよう勧告し、勧告に従わなければ企業名等が公表される。

脱プラを急ぐ日本の事情

 国はプラ新法施行により、30年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制し、容器包装の6割をリユース・リサイクルすることを目指しており、再生利用の2倍増、バイオマスプラスチック約200万トンの導入も見据える。さらに35年までにはリユース・リサイクル等で使用済みプラスチックを100%有効利用したい考えだ。

 プラ新法を作り国を挙げて脱プラを目指す背景には深刻化する一方の地球環境破壊がある。環境破壊に歯止めをかけることは世界共通の課題で、各国に責任ある取り組みが求められているのは、7年前にSDGs(持続可能な開発目標)が国連総会で採択されたことでも明らか。プラ廃棄物による環境破壊は従来考えられていた以上に破滅的で、海洋に流れ出た廃棄物は5mm以下のマイクロプラスチックとなって世界中の海を汚染する。人間の生活や生産活動から最も縁遠いはずの南極海でもマイクロプラスチックの存在が確認されている。

 特に日本にはプラ廃棄物排出大国として責任ある取り組みが求められる。日本エシカル推進協議会によれば日本は19年のプラスチック総廃棄量が世界で4番目に多く、人口1人当たりに換算すれば世界で2番目に多い。プラ廃棄物大国という不名誉な名を与えられてもおかしくない。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年3月7日号で】

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