『LOCKET第4号』 作り手の熱量伝わる独立系旅雑誌
2020.09.14 00:00

旅というのは表現力と感情をかき立てるツールだ。玄奘三蔵の時代から(←古い)大勢の人々が旅の記録や雑感を記し、学問の資料や芸術作品として残ったり、あるいはその場限りの娯楽として消費されてきたりした。
雑誌の世界も同じで、かつては旅の専門誌が山のようにあった。が、出版不況につれてその数は減り、特に海外旅行を扱うビジュアル誌は『TRANSIT』『CREA TRAVELLER』など数えるほどで寂しい限り。こういう雑誌をベッドサイドに置いて楽しみたいという読者は多いと思うんだけどなあ……。
そんななか!旅行誌好きの業界人にご紹介したいのが今回の雑誌。編集者1人、デザイナー1人という最少人数で自費作成している“独立系旅雑誌”だ。自費作成というわりに128ページというボリュームとカラー写真の多さ、石川直樹、蔵前仁一、吉岡乾といった寄稿者の濃さ、多さにまず感心。
そして今号の特集が「コーラをめぐる冒険」というのにもう一度感心。だって、コーラって旅する人なら誰でも、何かしら語れる思い出があるのでは。世界中にあるこの甘ったるいしゅわしゅわした飲み物は、時に甘露となるし、時に社会問題を考えるきっかけになる。編集人や寄稿者が出合ったコーラの記憶をたくさんの写真や密度の高い文章でたどるうち、今は行けない旅への郷愁で胸がいっぱいになる。また、雑誌好きなら、本誌の表紙がガリ版(謄写版)で全部手刷りされたと聞いたら、手に取りたくなるのではないだろうか。
1991年生まれの編集人が世に送り出す旅の雑誌には、いろんな熱量とキラキラがいっぱい込められている。旅を愛する業界人の皆さまにこそ、手にしてほしい雑誌だ。販売取扱店舗情報、またネットでの購入は公式サイトにて。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
カテゴリ#BOOKS#新着記事
-
?>
-
『ルーヴルの猫 (上・下)』 巨大な迷宮めぐる美術書のごとき作品
?>
-
『地球の歩き方ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方』 老舗ガイドブックの健闘に喜々
?>
-
『国境を超えたウクライナ人』 強靭さと国民性まざまざ
?>
-
『冬牧場 カザフ族 遊牧民と旅をして』 厳しくも美しい自然との共生
?>
-
『もてなしだけではもう食えない ホテル経営学の本質と実践』 基本原則を小説仕立てでわかりやすく伝授
?>
-
『リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法』 リーダーが目指すべき道はかくありき
?>
-
『テヘランでロリータを読む』 支配下でこそ強い物語が人々を救う
?>
-
『ヴェルヌの「八十日間世界一周」に挑む』 19世紀当時の熱狂を生々しく描く
アクセスランキング
Ranking
-
KNT-CT、6割増収で赤字縮小 今期の黒字化予想 非旅行業を強化
-
訪日実証ツアーで観光再開へ前進 米国など4カ国 旅行大手6社が実施
-
「このままでは観光孤立国に」 観光関連団体、水際対策緩和要望で危機感あらわ
-
旅行促進へメタバースの役割増加 83%が購買に興味
-
4月の客室利用率63.8% 前年比18.5ポイント増 9地域でプラス
-
クルマ離れが変える旅 免許保有率低下のなかで
-
エクスペディアが新戦略、事業者の旅行販売を包括支援 検索機能の改善も
-
関西経済同友会、舟運の活用を提言 クルーズで関西の広域観光模索
-
持続可能な旅の企業連合、エクスペディア加盟で活動に広がり CO2排出量測定など
-
旅行の成約率が上昇傾向 買い物かご放棄は減少