欧米で一大市場を形成するアドベンチャーツーリズム
2019.02.04 08:00

(C)iStock.com/tdub_video
富裕層を中心に欧米で一大市場を形成しているアドベンチャーツーリズムを日本で普及させる動きが出てきた。日本での認知度はまだ低く存在感はゼロに等しいのが現状だが、北海道や長野を中心に関心が高まっており、推進へ向けた協議会設立の準備も始まった。
アドベンチャーツーリズムというと“冒険”のイメージが先行し、登山・トレッキングやラフティング、スキューバダイビング、シーカヤッキングといったアウトドアスポーツを目的とする旅行を思い浮かべる。しかし、世界的にアドベンチャーツーリズムと呼ばれている旅行ジャンルの定義は少々異なる。
米アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)によると、「アクティビティー、自然体験、異文化体験の3要素のうち2つ以上の要素で構成される旅行」と定義されている。アウトドアスポーツは構成要素の1つであるアクティビティー(身体的活動)に分類され、釣りやスキー・スノーボード、サーフィン、乗馬、ハンティング、ソフトなものではハイキングも含まれる。残りの2要素である自然体験は、たとえば星空観賞やバードウオッチング、高山植物観賞などが該当する。異文化体験はアドベンチャーの語感からは最もイメージしづらい部分だが、具体的には地域ならではのイベントや祭り、食、風俗・習慣の体験、史跡見学、異言語学習などが含まれる。
こうして定義だけを追っていくと、アドベンチャーツーリズムの輪郭はむしろぼやけ、かなり幅広く漠然とした旅行分野のように感じられる。しかし、欧米を中心に確固たる旅行分野として存在するのは間違いない。このあたりのあいまいに感じられる定義と実際の存在感のギャップを埋めてくれるのが、JTB総合研究所の説明だ。同社は現在、「日本アドベンチャーツーリズム協議会」の設立に向けた準備の中心的な役割を担っている。
30代高収入層が志向する旅
「定義はもちろん重要だが、それ以上に重要な点は、世界に巨大な市場が厳然と存在していること」とJTB総研コンサルティング事業部の山下真輝コンサルティング第五部長は語る。市場を支えている中心層は平均35歳、高学歴・高収入の人々で、シェアリングになじみ、モノの所有より人生を豊かにする体験やコト消費に関心があり、地球環境や自然保護にも関心が高いのが特徴だ。旅先でも、たとえば単なるグルメ体験より地域ならではのローカルフード体験を楽しむ傾向が強い。「彼らが志向する旅の形態を総称するとアドベンチャーツーリズムということになる」(同)
北海道で想定されるアドベンチャーツーリズムは、たとえばこんな内容だという。雪山にファットバイク(雪面や原野を走りやすい極太タイヤを付けた自転車)で登り、休憩地点ではアイヌのガイドがアイヌ独特の茶でもてなす。また地元を熟知するからこそ案内できる絶景ポイントに案内し、民族楽器であるムックリを奏でて歓待する。「単に景色のいい場所に案内してチョコレートドリンクをサービスするだけのツアーなら普通だが、アイヌ茶やムックリでもてなすことで一気に価値が上がるのがアドベンチャーツーリズムの特徴」(山下部長)
アドベンチャーツーリズムはスポーツツーリズムや酒蔵ツーリズム、産業観光といったプロダクトアウト発想のテーマ別ツーリズムとは異なる。反対に、今後のツーリズムを牽引することが期待される比較的若く高収入な人々のニーズに見合ったツアーを用意するマーケットインの発想に基づく旅行分野であり、定義するのは彼ら自身ともいえる。
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