『兼高かおる世界の旅』 今あらためて思うその偉大さ
2019.02.04 16:13

兼高かおるさんがご逝去された。1959年から31年続いた『兼高かおる世界の旅』は、「世界をお茶の間に運ぶのが私の仕事」というご本人の言葉どおり、多くの日本人を海外旅行へと旅立たせた業界の恩人(?)的番組だ。1965年生まれの筆者の家でも、日曜の朝、家族でこの番組を楽しむのはひとつの習慣だった。兼高さんには、この仕事を始めてから何度か業界の会議やパーティーでお会いしたことがあるが、華やかで大らかで、同時にかわいい方だなあという印象が強く残っている。
尊敬する旅の大先輩の訃報を受け、追悼の意味を込め、アマゾンプライム配信の同番組をいざ視聴…と思ったら。59年のバルセロナではダリの自宅を訪れ、60年のバンコクでは若かりしプミポン国王が列席するチャリティーパーティーに招かれ、67年のグアムではたまたま同じホテルにいた越路吹雪にシュノーケリングを伝授する。
かおる、すげえな(呼び捨て申し訳ない)。幼い頃はわかってなかった。
著名人との接点だけでなく、サイパンではジャングルに分け入り日本兵が潜んだ洞窟に行ったり、当時秘境だったアンコール遺跡を訪ねたり、相当ハードな旅もしているのだが、口調はおなじみの「なんですのよ」「わたくし思うに」というお嬢様言葉、どこに行ってもおしゃれで振る舞いは優雅、現地の人々にも常に敬意を払いていねいだ。
そうだ、そうだった。お茶の間の昭和な日本人は、紹介される異国の情景だけでなく、この兼高さんの「オカネモチ」っぽい雰囲気や余裕のある態度にあこがれて、「こんな旅がいつかできたら」と思っていたんじゃないかな。
番組開始から半世紀以上が経ったが、日本人は、あんな素敵な旅ができるほど成熟できたのだろうか。兼高さん、どう思われていましたか?
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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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