『わたくしが旅から学んだこと』 時を経て知る兼高さんの言葉の重み
2019.07.15 18:11
今年1月5日、90歳で逝去された兼高かおるさん。彼女が80歳を超えた頃のエッセイ集が緊急重版となり、10年ぶりに手にしてみた。
で、ちょっと驚いた。
なんだか読んだ印象が違うのだ。
もちろん内容が変わっているわけではない。変わったのは私のトシと、旅の状況と、社会情勢なんだと思う。
1928年に神戸で生まれ、アメリカの日本占領が終了した後、ロサンゼルスに留学。アメリカの自由で前向きな空気に触れ、才能を開花させる。そして帰国後の58年、「80時間世界一周」企画で新記録を達成し、59年12月に「兼高かおる世界の旅」がスタートする。以来31年間にわたる国民的旅番組のプロデューサー兼ナレーターとして活躍を続けた。本書には、彼女が人生、そして旅で見つけた滋味がつづられている。
番組の裏話や旅の持ち物リストなども興味深い(取材ノートを絶対落とさないようにゴムベルトに挟んでいたとは、さすが現場の知恵)が、ぐっとくるのはやはり人生観、仕事観、世界観を語る部分だろうか。
「『これしかない』わたくしはこの言葉は好きではありません」
「若い人は安い旅をしてはいけない」
「正しいというのもひとつではない」
「忘れる自由はあってもいい」
旅を通じ世界の変化を体感してきた彼女は、「世界を巡る旅は、まるでエンドレスの映画を見るよう」「だから、旅は飽きることがなく、その終わることのない映画をわたくしは観続けたいと思う」と語る。生涯独身で仕事に生きた女性の先輩として、「自分の目で見ることにまさる実感はない」と最後まで旅を愛した先輩として、初読から10年後、その言葉の重さを多少は深く感じ取ることができるようになったのかなあ、と己を振り返る読書体験だった。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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