旅行中も監視カメラにご用心  

2024.07.08 00:00

 ロンドンやシドニーなどでは、道路の赤信号に違反すると監視カメラが作動し反則金の請求が郵送されてくるため、信号無視の減少に役立っている。では宿泊施設はどうだろう。

 エアビーアンドビーが4月30日からレンタルルームでの監視カメラの使用禁止を発表し、プライバシー侵害を懸念する人々に歓迎されたとニューヨーク・タイムズが報じた。この発表は多くの旅行者に、監視カメラの役割とプライバシー上の権利という長年の議論に根本的な問いを投じた。

 監視カメラはコンビニから空港ターミナルまで多くの公共の場所にあり、一部の人に不気味かつ脅威だが、本来の使用目的は顧客とその財産を守るためだ。廊下に防犯カメラが設置されているホテルの部屋や賃貸アパートでは旅行者は安心できるかもしれない。また、施設所有者は物的損害や盗難防止にカメラが役立つと考える。旅行者にとって自分自身と持ち物を守ると同時に自分のプライバシーを守ることのバランスの問題でもある。

 米国では監視に同意が必要かどうか、またどの程度の同意が必要かは州によって異なり、音声とビデオの記録についても異なる規則があるが、一般に寝室やバスルームなどプライベートなエリアでの同意なきビデオ撮影は禁止だ。連邦レベルでもビデオ盗撮防止法により、本人の同意なくプライベートな領域の画像を故意にビデオ撮影、写真撮影、録音、放送することは禁止される。

 エアビーアンドビーは廊下やキッチンなど共用スペースに設置された監視カメラの存在を宿泊客に告知することを義務付けることで窮状を乗り越えてきた。民泊予約サイトのバーボも22年以降、宿泊客に公開され宿泊客が無効化できるカメラを除き屋内カメラの使用を禁止した。米国の全フランチャイズホテルを代表する米国ホテル・宿泊協会(AH&LA)はホテル内の監視カメラはロビーやプールなど共用エリアに限定すべきだと主張する。

 隠しカメラの違法使用は旅行者に脅威だ。クルーズ船客室乗務員による客室盗撮、宿泊施設での盗撮、航空機の化粧室の便座にテープで貼り付けられた携帯電話などがその例だ。専門家はこのような犯罪は例外的だが悪意ある理由で隠しカメラを使用する人が依然存在し警戒が必要という。

 隠しカメラ発見には専用機器の使用が一番だが、簡便な自衛手段もある。ラジオ付き時計、電源コンセント、煙感知器や充電式電子機器など、電源に接続される小型の録音装置やレンズを探すことだ。照明を消し、携帯電話の懐中電灯でカメラ作動中の可能性のある点滅光を探す。よく分からない場合は電子機器にタオルを掛けるか、コンセントにテープを貼る。多くの録画機器はネット接続が必要なため、Wi-Fiに接続されている機器がないか確認し、あればそれが何かを管理者に尋ねてみる。

 隠しカメラを見つけた場合は警察に連絡し、新しい宿泊施設を探すことだ。こうした理由で宿泊施設を変更する場合、宿泊料金全額が返金される可能性が高い。皆さんもご用心を。

平尾政彦●1969年京都大学文学部卒業後、JTB入社。本社部門、ニューヨーク、高松、オーストラリアなどを経て2008年にJTB情報開発(JMC)を退職。09~14年に四国ツーリズム創造機構事業推進本部長を務めた。

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