数字でつかむ地域の観光 都道府県の予算、宿泊者数、観光消費

2024.07.01 00:00

(C)iStock.com/cinquefx

昨年のインバウンドは人数がコロナ禍前の19年比で79%まで戻り消費額は過去最高となった。国内旅行も旅行消費額が19年と同水準となり、延べ旅行者数も85%まで回復している。観光需要の力強い回復を反映して、観光予算を強化する地域が増えている。

 全国の各自治体の観光関連予算はどう推移しているのか。その動きを把握するため、本誌では毎年アンケート調査を実施している。対象は全国47都道府県と20の政令指定都市で、今年もこれら合計67自治体のすべてから24年度予算に関する回答を得た。調査では、予算の増減を時系列で比較しやすいように、基本的に本予算(当初予算)での回答を求めている。ただし、首長選挙等のタイミングによっては、前年度との単純比較ができない予算が組まれるケースがある。そうしたイレギュラーな事情がある場合、予算額一覧表の備考欄に説明を付記するなどしている。

 全67自治体の24年度の観光関連予算について前年度予算と比較すると、前年度より予算を増額したのは38自治体(27都府県・11政令指定都市)で、23年度の31自治体(21都府県・10政令指定都市)より増えている。

 年度ごとの予算の増減を、コロナ禍前(19年度)から年を追って比較してみると、前年度より予算を増額した自体体数は、19年度36、20年度40、21年度33、22年度46、23年度31、24年度38となる。19年度は観光需要の順調さを反映した予算増額傾向があり、予算編成時にはまだコロナ禍の影響がなかった20年度もそのまま増額傾向が続いた。それがコロナ禍の影響が予算に反映された21年度は増額傾向がいったん止まり、22年度になると今度は各自治体が緊急対応として需要喚起キャペーンなどに取り組んだため増額自治体が急増した。そして需要喚起キャンペーンがひと段落した23年度は予算の上下動が落ち着き、24年度はコロナ禍前と同様に順調な需要動向を反映した予算増額傾向が戻ってきたという流れが見て取れる。

 予算額そのものを見ても、24年度の予算額がコロナ禍前の19年度予算額を超えた自治体数は48自治体(35都道府県・13政令定都市)で、全体の7割を超えている。また予算額が10億円を超える自治体数は19年度には32自治体(23都道府県・9政令指定都市)だったが、24年度は40自治体(30都道府県・10政令指定都市)まで増えている。こうしたことからも、観光関連予算はコロナ禍の影響に振り回されて増減した時期を脱し、24年度予算については需要増を背景としたいわば“健全”な増額傾向を取り戻したと考えられる。

 なお増額回答の多かった24年度予算だが、予算が大幅に減った自治体もある。沖縄は前年度比75.5%減だが、元をたどれば22年度予算で、コロナ禍に苦しむ県内観光産業を支援するために予算を10倍以上増やした影響が尾を引いている。その反動で23年度は予算が半減、24年度も8割減となったわけだ。しかし24年度の予算額自体は19年度予算額と比較すれば97.2%で、コロナ禍前に戻っただけという見方もできる。

 同じように、24年度予算の減少幅が大きかった自治体の24年度予算額を、19年度予算を100とした場合の割合で表すと、浜松市106.7%、熊本市48.4%、鳥取県100.6%、三重県448.7%、新潟市74.2%、熊本県55.3%、和歌山県90.2%、静岡市116.2%などとなる。コロナ禍前との比較では増額している自治体もあることが分かる。

外客予算の増額が顕著に

 24年度予算の増額の最大の理由は、外国人旅客誘致予算の増額である。同予算が増額になった自治体は23年度が43(30県・13政令指定都市)で、24年度も42(31道県・11政令指定都市)となり、2年連続で増加自治体数が40を超えた。また2桁以上の増額となった自治体数も23年度の35(28県・7政令指定都市)に続き、24年度も32(23道県・9政令指定都市)となり2年連続で30を超えた。逆に外国人旅客誘致予算を減額した自治体数は23年と同じく18(12府県・6政令指定都市)にとどまっている。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年7月1日号で】

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