『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』 最後まで理性と知性の人
2024.02.26 00:00
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23年3月28日、坂本龍一が闘病の末この世を去った。享年71歳。2カ月前に高橋幸宏が逝去したばかりで、YMO世代としては寂しい限り。ということで今回はこちらの本をご紹介しよう。がんで余命宣告された坂本氏自らが開始した連載を1冊にまとめ、死去3カ月後に出版された自伝である。
晩年はニューヨークに拠点を構えた坂本氏。日本人アーティストには珍しく原発や基地問題、環境問題への発言も多く、スピな活動系に走っちゃったのかな?とも安易に思っていたのだけど、最後まで彼は理性と知性の人だったのが本書を通じてよく理解できた。
有名編集者の息子で大学時代にプロデビュー、YMOの活動や映画音楽で世界的な著名人となったスーパーセレブ。創作活動は貪欲で、表現のためさまざまな道具や自然の音を取り入れたり、実績のない中国の若手キュレーターや台湾の少数民族、ニューヨークのレストラン、さらにBTSや無名のアーティストまで国籍・キャリア関係なく多くの人と広く深く交流する。子供の音楽活動支援、ウクライナのバイオリニストとの共作など社会活動と同時にCMやアニメなど大衆向け作品も量産しており、エネルギーすごすぎる……。
なにより圧倒されたのが、彼の知性だ。言葉の端々から彼が病気も含め自分や社会を俯瞰していたのが伝わり、だからこそ多忙な世界的著名人という立場でも精神のバランスを保ったまま時代とズレずに創作に打ち込めたのだなと想像できる。これは数多く言及される書物や芸術にも影響されていると思う。教養、大事なんだなあ……。
「日本にはサカモトがいた」と世界に胸を張れる実績を残した氏に感謝。教授、少しでもマシな日本になるよう努力しますので、どうぞ安らかに。
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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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