ニュースで振り返る2022年 コロナ禍の出口見え、安堵の一方で残る課題

2022.12.19 00:00

(C)iStock.com/borchee

観光業界にとって歴史上最悪だった2年間からの出口がようやく見え始めた。そんな安堵感がうかがえる22年のニュースランキングだが、一方でコロナ禍を境に激変した事業環境への不安感も透けて見える。

 新型コロナウイルス感染症に起因するバッドニュースばかりが目立った過去2年間のニュースランキングが、今年ようやく変化した。

 観光業界のキーパーソンが22年のニュースの1位に選んだのは「水際対策ようやく緩和で訪日本格再開」(658点)。世界の流れに遅れていた日本の水際対策が10月11日からようやく大幅に緩和され、入国者数の1日当たり上限規制の撤廃、ビザ取得義務の緩和、個人旅行の解禁が実現した。訪日旅行と海外旅行の両方に重くのしかかっていた規制の緩和だけに、業界人は一様に安堵した。

 ただし、ここからいよいよ反転攻勢という楽観論は大勢ではなさそうだ。「これまで相当なダメージを受けている事業者が多く、負債のことを考えると、とても喜んでいられる状況ではないと実感させられる。本格的な回復が見えたとしても、背負った借金を返済しながら立て直すことは容易ではない」(バリュー・クリエーション・サービスの佐藤真一代表取締役)と、いばらの道を覚悟するコメントも見られた。

 上位5位までに目を向けると、ダークなニュースが並ぶ。2位「歴史的円安で悲喜こもごも」(512点)は、一時は1ドル150円まで進んだ円安で訪日旅行需要の押し上げ効果が期待できる半面、ただでさえ動きが鈍い海外旅行を抑制してしまう影響への強い懸念が示された。3位「旅行急回復で人手不足が深刻化」(473点)は、コロナ禍によって縮小した人員が急には元に戻らない状況に苦しむ事業者の多さをうかがわせる。

 4位「ウクライナ侵攻やまず空の便大混乱」(362点)は、世界は新型コロナのパンデミックの脅威だけでなく、テロや戦争などさまざまなリスクに満ちていることを再認識させられた。5位「海外旅行ひと早く再開も壁高く」(352点)は、ゴールデンウイークを境に各社の海外パッケージツアーが再開されたにもかかわらず、大幅な需要回復の期待かなわず。19年比8割減の水準を脱せない状況への落胆ぶりが伝わってくるものだ。

 30位までのランキングを俯瞰して見ても、未来に期待を抱けそうな前向きの変革や新ビジネスの芽に関するニュースは、ほとんど下位に沈んだ。「メタバースにNFT…各社各様に模索」(47点)、「自治体の誘客策、ウエルネスに熱視線」(46点)、「宇宙旅行、商業ベースの取り組み広がる」(43点)などはいずれも20位台。「ペット同伴、輸送大手参画で進化」(4点)は最下位の30位だった。

 流通の仕組みづくりが遅れていたタビナカのデジタル化対応が進んだことを取り上げた「タビナカのDXや流通環境の整備加速」(90点)も17位にとどまった。コロナ禍の出口に向けて取り組みが進んだ「富裕層ターゲットの誘致策活発化」(116点)は12位とトップ10に届かなかった。

立ちはだかる不安材料

 コロナ禍前の常識も手法も通用しないのがアフターコロナの世界と考えられる。その現実を前にして、業界人には不安や警戒感が強いようだ。

 3位「旅行急回復で人手不足が深刻化」は、観光業界全体の質の低下、業界への不信感につながっているとの指摘がある。「教育旅行現場でも、入札依頼に対し辞退する旅行会社が増えており、選択肢が少なく提案内容の質の低下も危惧される声が学校から寄せられている。担当者の変更も多発しており、新担当者のスキルとノウハウダウンから情報や助言に関しても信用されていない状況」(日本修学旅行協会の高野満博常務理事・事務局長 )

【続きは週刊トラベルジャーナル22年12月19・26日号で】

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