新入社員の君へ いま届けたい産業人への思い

2022.05.02 00:00

(C)iStock.com/tadamichi

コロナ禍により観光・旅行業界の多くが採用中止や採用減を余儀なくされるなかで、業界の門を新たに叩く新入社員もいる。逆風下の観光産業へ仲間入りを果たす若者たちへの期待は高い。観光産業のリーダーたちが、観光復活を担う若人たちに託す思いを紹介する。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きた一昨年の時点で、その影響が長引くことはある程度予想できた。しかし未曽有の事態ということもあり、その影響度まで見通すことは難しかった。もちろん観光産業の採用活動にも深刻な影響を与えている。

 トラベルジャーナルでは観光産業の主要企業を対象に採用状況を尋ねるアンケートを実施。22年4月の採用状況と23年4月の採用計画について、18社(旅行7社、航空3社、鉄道3社、ホテル5社)から回答を得た。それによると18社中12社が今年4月の採用数が前年より減少したと回答。減少した12社のうち半数以下は7社、4社は採用がゼロだった。

 昨年の調査では21年4月の採用数が前年より減少したとの回答が20社中18社で割合は90%。これに対し今年4月の採用数について減少との回答は18社中12社で67%となった。一方で20年4月の採用数と比べると18社中14社の78%が減少という状況にある。

 業種別に見ると旅行会社は前年より増加は1社もなく、7社中4社が採用ゼロ。ホテルも5社中4社が前年からほぼ半減した。また20年比では9割減、8割減、7割減が各1社、2社はほぼ横ばいだ。鉄道は3社中3社とも減少している。鉄道やホテル、航空会社といった、いわゆる装置産業は最低限のサービス提供やシステム維持のため一定規模の採用は継続。JR西日本は前年より大幅減ではあるものの22年も約120人を採用し「人手不足とならないよう、機械化や省力化に取り組むとともに、深夜帯ダイヤを見直し、メンテナンス部門の働き方を改善するといった取り組みを進めている」としている。

 一方でコロナの逆風下にあって22年は完全に採用を停止した企業が多い旅行会社。将来的な影響への不安も大きく、アンケートでは「業界の先行きがなかなか見通せない状況はもうしばらく続く。仕事内容の魅力について伝えることが難しい状況なので、人材確保には厳しい状況が続くと思われる」や「業界および会社の現状や今後を不安視する意見が多くなった。業界全体の明るいニュースが増え、入社を希望する人が多くなることを願っている」といったコメントが見られた。

23年は上向き傾向へ

 しかし23年4月の採用には明るい兆しが見える。旅行会社も採用を再開する動きだ。JTBグループや日本旅行は採用再開に踏み切るとしており、東武トップツアーズも22年の85人から採用をさらに増やす予定。

 航空会社3社はいずれも採用を増やす。日本航空は22年採用では一部職種のみの採用だったが23年はすべての職種で採用を再開。全日空も22年は新卒採用を一部職種に限定していたが、23年は採用活動を客室乗務員以外の職種に拡大する。

 鉄道は3社中2社が23年採用計画に関して減らすと回答しているが、JR東海は「採用減の主な理由は今後の退職者数の動向によるもので、コロナの影響によるものではない」と説明している。

 ホテルは5社中3社が23年採用を増やす計画で、残り2社も22年並みの採用を計画。「採用に関してはこれまでの契約社員のみの採用に限らず、積極的に正社員の採用も進める」として採用を増やす計画のホテルや、「今後も複数の新規開業を控えるため、23年卒も前年と同程度を採用予定」として400人規模の採用を予定するアパホテルなど、前向きの姿勢が目立つ。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年5月2日号で】

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