海外旅行の扉を開く 旅行業の復権はいかに

2022.04.25 00:00

(C)iStock.com/xijian

日本帰国時の行動制限や感染症危険情報の緩和が進みつつある。約2年にわたり閉ざされてきた海外への扉を開こうと、手配旅行から始まった再開の動きはパッケージツアー再開へ加速している。店舗縮小や事業撤退が進んだコロナ下の変化にむしろ商機を見いだし、新規参入する企業もある。

 世界各国で国境をまたぐ人の移動が急速に活発化している。他国へ旅行者を送り出すだけでなく、海外からの旅行者の受け入れも積極的に再開する国々の中には、コロナ禍以前に日本人旅行者が多数訪れていた国・地域も含まれる。

 3月から4月にかけて、フィリピンやタイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアといった東南アジア各国が相次いで、ワクチン接種完了を条件に入国後の行動制限などを緩和し、日本人旅行者の受け入れ環境を整えた。オセアニアでも、すでにオーストラリアがワクチン接種済みの日本人旅行者に隔離なしの入国を認めており、ニュージーランドも5月2日から日本を含むビザ免除国からの旅行者に対する入国制限を撤廃する。

 これらの国々では、海外旅行者の誘致活動やプロモーションも本格的に再開されつつある。タイ国政府コンベンション&エキシビションビューローは3月にMICE研修旅行を実施。オーストラリアでも3月にメルボルンで国際MICEイベントが対面形式で開催されており、5月には同国最大の国際旅行見本市「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)」がシドニーで3年ぶりに対面で開催。オーストラリア政府観光局は4月から広告キャンペーン「ワクワク大陸、いよいよ再開。」を日本で開始した。日本の海外旅行者を受け入れる側の準備は着実に整いつつある。

 この流れに追いついていないのが日本政府の国境政策だ。3月1日から、ワクチン3回接種済みで水際強化措置の非指定国からの帰国ならば自宅待機が免除となり、海外旅行再開の大きな壁であった帰国後待機問題は解消された。しかし、もう1つの壁である感染症危険情報と入国者数上限は、緩和こそされても完全には解消されていない。外務省は4月1日から106カ国を対象にレベル3(渡航中止勧告)からレベル2(不要不急の渡航自粛)に引き下げた。JATA(日本旅行業協会)が企画旅行の実施の考え方を記したガイドラインでは、レベル3以上で旅行中止とし、レベル2でも一定の条件下で実施可能だが、大手などはレベル2で募集型企画旅行、いわゆるパッケージツアーを原則自粛してきた。入国者数も1日1万人に引き上げられたとはいえ、1日平均14万人が入国していたコロナ禍前には程遠い。

 だが、海外旅行の扉が完全に開いていないなかでも、積極的なアピールに打って出る旅行会社もある。再開へ動き始めたことをいち早く消費者に訴求したのがエイチ・アイ・エス(HIS)だ。3月から自社ウェブサイト上で「今すぐ行ける海外旅行」と銘打ち、まずは手配旅行でワクチン接種者モニタープランなどを取りそろえた。さらに3月中旬には、東京都内や全国主要都市で「海外旅行解禁!!」と題した新聞の号外風のチラシを街頭で配布し、大々的に一般に周知した。

動きだしはハードリピーターから

 HISの飯田憲史執行役員個人旅行営業本部長・海外旅行事業部長はこの狙いについて、「“海外旅行のHIS”として、まずは最新状況を伝えたかった。コールセンターへの問い合わせ内容を見ても、海外旅行に関する正しい情報が消費者に伝わっていない。海外に行きやすくなってきたことを知ってもらい、再開への雰囲気を盛り上げたかった」と話す。

 同社のモニタープランは、モデルコースを提示し、旅行者が旅程や料金の目安として参照し、最終的に手配旅行として申し込むスタイルだ。日本人の観光目的での入国を隔離なしで認めている国・地域を対象方面としている。「先々の予約はパッケージツアーでも受け付けているが、再開時期が確定していない段階では、すぐにでも海外旅行に行きたい消費者に選択肢を提供し、要望に応えている」(飯田本部長)

【続きは週刊トラベルジャーナル22年4月25日号で】

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