ナイトタイム活用や滞在延長に効果、「星空観光」テーマにシンポジウム
2020.11.30 00:00
美しい夜空は観光素材となる。その夜空は闇に近いほど星が際立ち、星空観光はダークスカイの存在が前提となる。日本でもダークスカイツーリズムへの注目が増しており、10月30日、ツーリズムEXPOジャパンでシンポジウムが行われた。
シンポジウム冒頭で挨拶した石垣市の中山義隆市長は八重山諸島の夜空の魅力について、「八重山上空はジェット気流の影響を受けないため星空観賞に必要な大気の安定が得られ、全天に21ある1等星のすべて、また88星座のうち84星座を見ることができる。12~6月には南十字星が見れる」と紹介。18年3月に日本で初めて星空保護区(ダークスカイ・パーク)に認定されるまでの経緯も説明した。
基調講演では星空保護区の認定組織である国際ダークスカイ協会(IDA)のアダム・ダルトン・プログラムマネージャーがビデオ録画で参加。IDAの19年調査によれば、認定制度を導入した世界21カ国の認定地域では年間3000件以上のイベントが開催され29万5000人を集客。米国アリゾナ州のオラクル州立公園では、星空保護区の認定により年間400万ドルの経済効果がみられたことなどを説明した。また、西表石垣国立公園に続く日本で2番目の登録を目指して申請中の神津島に関し、「まもなく認定となる」と審査の見通しを示し「日本はこの分野でアジアのリーダーになれる」とした。
ニュージーランドのテカポを世界のダークスカイツーリズムの聖地といわれるまでに育てた小澤英之氏も、テカポ・ダークスカイ・プロジェクトのディレクターとして現地からオンラインで参加。1994年から現地で星空観賞ツアーを始めた同氏は、2000年に町の夜空が損なわれかねない再開発計画が持ち上がったのをきっかけに星空保護の活動を開始。当初は再開発優先を主張し活動に反対する者も多かったが次第に状況は変化。12年にテカポがIDAの認定を受け世界中から星空目当ての観光客が訪れるようになって以降は「当初われわれの活動に反対だった人も星空観光を手掛ける同業者になり、星空を守る側になるなど状況が大きく変わっていった」と振り返った。
避けて通れない光害対策
パネルディスカッションは、西表石垣国立公園を担当する環境省自然保護官の竹中康進氏と、八重山地域で星空を生かした観光振興に取り組む星空H2O八重山地域振興会代表理事の友利恵子氏に小澤氏が加わり、IDA東京支部代表の越智信彰氏(東洋大学准教授)が進行を務めた。
友利氏は「観光を継続的に発展させていくには滞在型観光が必要で、宿泊を伴う星空観光は滞在延長にもつながり経済効果も大きい」と指摘。同時に「認定エリアの外では光害(ひかりがい)が年々進行している。星空保護は観光業のためとの誤解があり、生態系保護に重要な取り組みとの認識が薄いのが課題」とした。竹中氏も「光害は夜行性動物、海洋生物など多くの生物に悪影響を及ぼす。星空観光のルール作りと光害対策の徹底で自然環境保護を進められる」と期待した。また、越智氏は「光害とは星が見えないだけではなく、動物や人間の健康、エネルギーの無駄遣いにかかわる問題で、光害対策は次世代のまちづくりでも避けて通れない」と強調した。
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